使い勝手は今後の課題?
専用ソフトがほしい
一般的なタブレット端末などでは、指先を上下左右にすばやく振るように動かすフリック操作など、直感的なジェスチャーの認識が操作性に大きく影響している。Windows 7の場合、上下のフリックがスクロール、左右のフリックがウェブブラウザーの「戻る/進む」となる。さらに斜め4方向のフリックには、コピーやペースト、保存や削除といった機能を割り振ることができる。タッチ操作に対応する一部のソフトならば、ピンチイン・アウトでの拡大/縮小にも対応する。
TH40/Dのタッチパネルは、指2本以上の接触によるマルチタッチやジェスチャー機能に対応する……のだが、やはりWindows 7は指でのタッチ操作に最適化されているわけではない。「最小化」「閉じる」といったウインドウ枠の操作をはじめとして、プルダウンメニューの操作などはタッチでは困難である。誤った場所をタッチして遅延すると、ただでさえ遅い処理速度にいらいらすることもあった。
やはりスレートPCとして運用するのであれば、タッチ操作に最適化したユーザーインターフェースが必要になるだろう。あるいは、専用のアプリケーションランチャーなどがあってもいい。Windows 8ではある程度解決されるのだろうか?
電源周りも見てみよう。電源には付属の小型ACアダプターを使う。バッテリーはユーザーでは交換できない内蔵型リチウムポリマーバッテリーを搭載して、最大約6時間のバッテリー駆動が可能だという。バッテリーチェックツール「YbInfo」を使って確認したところ、バッテリーの出力電圧2.531Vで、設計容量23320mWhとなっていた。
LEDバックライトの輝度を最高にして、CPU負荷を100%にした状態の消費電力は約7000mW。計算上は約3.33時間のバッテリー駆動が可能となる。一方で、バックライト輝度を最低レベルに落として、何も処理をさせないでいると消費電力は約4000mWになり、しばらくそのままにしておくと一気に約1500mWにまで低下した(計算上は約15.55時間)。待機モードでの消費電力の低さがAtom Z670の特徴でもある、それがうまく現れているようだ。
最後に音声再生についても触れておく。TH40/Dは律儀にも、本体両側面の手前にステレオスピーカーを搭載している。中低音は出ないが、ミニノートスタイルで使うと、そこそこ聴ける音が鳴る。
★
スレート端末とミニノート、どちらも使えるように設計された「ハイブリッドモーション」。ユニークなコンセプトは高く評価できる。ハードウェアもしっかりした造りで、Windows 7 Home Premiumの採用も今後の汎用性を考えれば好感が持てるものだ(Windows 7 Starterはマルチタッチ操作をサポートしていない)。CPUの低スペックもバッテリーでの長時間動作やファンレスを重視したと思えば問題ではないが、いざ運用するとなると、性能面で使い方はかなり限定されるだろう。
直販サイト「富士通WEB MART」での販売価格は7万9800円。本稿執筆時点での「価格.com」での最安価は6万3000円前後である。後者であれば買ってみたいというユーザーも少なくなさそうな製品だ。
FMV LIFEBOOK TH40/D の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Atom Z670(1.50GHz) |
メモリー | 1GB |
グラフィックス | CPU内蔵(Intel GMA 600) |
ディスプレー | 10.1型 1024×600ドット タッチパネル内蔵 |
ストレージ | HDD 120GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11 b/g/n、Bluetooth 3.0 |
インターフェース | USB 2.0×2、ダイレクト・メモリースロット、HDMI出力など |
サイズ | 幅274×奥行き188×高さ17.4mm |
質量 | 約1.1kg |
バッテリー駆動時間 | 最大約6時間 |
OS | Windows 7 Home Premium SP1 32bit版 |
直販価格 | 7万9800円 |
筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
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