3Dグラフィックスは得意……なはずだが?
A4-3300Mを載せたg6-1100には、ユニークなソフトがプレインストールされていた。CPU/GPUのそれぞれの使用率や、プロセッサーバスのCPU/GPUの占有率をグラフで示す「AMD System Monitor」だ。これを見ると、アプリケーションによってCPU/GPU負荷がどのように違うかがわかって興味深い。
例えば、「MMD」(MikuMikuDance)の物理演算を有効にして多キャラクターを躍らせてみると、49fpsの描画に留まっていた。これはGPU使用率が90%近い一方で、MMDがCPUに50%程度の負荷をかけているため、CPUの遅さが反映されてしまっていると推測できる。一方、mp4のHDビデオ(720p)をWindows Media Playerで再生すると、CPU負荷は18%前後、こちらはコマ落ちなどもなく非常にスムーズに表示できている。
ベンチマークソフト「CrystalMark 2004R3」で3D性能を見る「OGL」(Open GL)スコアは「14809」。前回紹介したCore i5-2540M(2.60GHz)を搭載する「VAIO S」の場合、CPU内蔵GPUでは「1813」だが、ドック内蔵のRadeon HD 6630Mを動かすと「16968」になる。これらと比較すると、確かにg6-1100の3D描画能力は高い。
AMDの資料によれば、グラフィックスベンチマーク「3DMark Vantage」のスコアは、A4-3300Mで「1984」。これはCore i7-2630QM+Radeon HD 6470Mのスコア「1949」よりも高いことになっている。しかし、3Dゲームなどエンターティメント分野のソフトでも、必ずCPUは使う。CPUがネックになってしまうのなら、GPUだけが速くても実用面で意味はない。
では省電力面ではどうだろう。3D描画が弱点のノート用Core i3に3Dに強い独立GPUを追加するくらいなら、1プロセッサーでGPUも内蔵するA4-3300Mの方が、消費電力を抑えられるはずだ。しかしA4-3300Mは、クアッドコアのプロセッサーを2コア使えなくしたデュアルコアCPUなので、TDPはクアッドコアのA8-3500MやA6-3400Mと同じ35Wである。
なお、省電力機能としては「AMD VISION Engine Control Center」という電源プラン設定ツールで、CPUのクロック周波数の上限/下限を800MHz~1.9GMHzで自由に変更できるようになっている。
10.8V×4200mAh(45360mWh)の6セル・リチウムイオンバッテリーを搭載して、バッテリー駆動時間は約6時間15分。バッテリーチェックツール「YbInfo」を用いてバッテリー使用状況を確認したところ、バッテリーの設計容量47693mWhに対して、何も負荷をかけない待機状態の消費電力は7495mW(計算上は6.36時間)。mp4ビデオの再生では同15000mW前後(同3.18時間)で、CPU負荷を100%にした状態で同19883mW(同2.34時間)であった。
では最後に、定番のスピーカー評価も付け加えておこう。g6-1100では「ALTEC LANSING」ブランドのステレオスピーカーを搭載し、SRS Labsの「SRS PREMIUM SOUND」を用いて、音楽/音声/映画それぞれに適した出力効果が得られる……はずだ。だが、こちらも音が鳴るのが精一杯という程度。「低価格だから」を免罪符にするなら、わざわざオーディオブランドの名前を冠する意味はない、と感じるレベルであった。
g6-1100が搭載する豊富な機能を見れば、このノートが4万円で買えることに驚きを隠せない。コストパフォーマンスは非常に優秀だ。しかし一方で、使ってみると「値段相応の製品」ということもよくわかる。上位のA8-3500MやA6-3400M搭載機の登場を期待したいところだ。
g6-1100 AMDモデル(エントリーモデル)の主な仕様 | |
---|---|
CPU | A4-3300M(1.9GHz) |
メモリー | 2GB |
グラフィックス | CPU内蔵(Radeon HD 6480G) |
ディスプレー | 15.6型 1366×768ドット |
ストレージ | HDD 320GB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
無線通信機能 | IEEE 802.11 b/g/n |
インターフェース | USB 2.0×3、2in1メディアスロット、HDMI出力、アナログRGB出力、10/100BASE-TX LANなど |
サイズ | 幅378×奥行き246×高さ30.5~38mm |
質量 | 約2.36kg |
バッテリー駆動時間 | 最大約6時間15分 |
OS | Windows 7 Home Premium SP1 64bit版 |
直販価格 | 3万9900円 |
筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
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