このシステムを防音設備の整ったスタジオに設置したわけだが、一般的な家庭の広さを考えて部屋の一部のみを使う形にした。
サラウンド再生におけるスピーカーの配置は、視聴距離から等距離になる(つまりスピーカーが円周上に配置される)ことが理想で、さらに付け加えれば、それぞれのスピーカーの配置角度も推奨位置がある。ただし、すべてを厳密にやるのは無理な話。さまざまな家具が置かれたり、部屋の形状の問題もあるので、実現が遠のいてしまう。
そこで、とりあえずは距離を揃えることを重視したい。これもすべてのスピーカーを等距離で統一できれば理想だが、それが難しい場合はフロントの左右、サラウンドの左右の距離だけは揃えるようにしたい。配置に関しては、あくまでも「円周上の配置」をイメージしてそれに近い状態になるように心がければ十分だ。
今回は各スピーカーを視聴位置から1.5mで統一した。8畳くらいの室内ならば十分だし、リアの位置を少し変えれば6畳間でも実現できる室内をイメージした。
また、スピーカーとの距離を1.5mとしたのは、一般的なリビングで使われているテレビの画面サイズも意識したためだ。最適な視聴距離は画面の高さの2~3倍とされており、37V型(画面の高さが約45cm)~42V型(同約52cm)くらいが、釣り合う画面サイズと言えるだろう。
このほか、後方スピーカーを置く台の関係で、リアスピーカーの位置はやや後ろ寄りとなっている。
さらにスピーカーセッティングでは、位置およびスピーカーの向きを決めてから、カメラ用の水準器を使って、きちんと水平・垂直を揃えるようにしている。スピーカーが前後や左右に傾いているようでは、その中央に浮かぶはずの音像がピタリと重なるはずがない。これをきちんと水平・垂直を揃えることで音像定位を高めるのだ。
スピーカーの傾きはわずかなので、コピー用紙などを折りたたんで適当な厚さにして挟んでやるだけだ。このときに、スピーカーを軽く押してみてガタつきがないようにしてやるのも基本テクニック。
こうして物理的なセッティングが終わってから、AVアンプの自動音場補正を行ない、部屋に合わせた周波数特性の補正なども加えている。順番としてはまずは物理的なセッティングが先。最初はすべてを自動音場補正にお任せしてもいいが、スピーカーの実力をきちんと引き出すならば、物理的なセッティングもきちんと追い込みたい。
と、まあ、セッティングの話が長くなってしまったが、これは実際に5.1chのサラウンド環境を実現してから、じっくりと時間をかけて行なえばいい。こういったセッティングによる音の変化を楽しむのもAVのひとつの楽しみ方だ。
いよいよ編集部の2人がサラウンドを体験
では、いよいよ編集部の2人に来てもらいサラウンドを体験してもらうことにしよう。登場するのは、BDレコーダーはヘビーに使っているけれども、音の方はあまり気にしていない編集Oと、年季の入ったオーディオ好きだがサラウンドは敬遠している編集Kだ。
編集K:おっ、良い感じにセッティングされていますね。
編集O:いいな~。宝くじが当たったらこういう部屋が欲しいです。
編集Kはさすがオーディオマニアらしく、後方スピーカーがやや後寄りであることを鋭く指摘。先ほど説明した画面の視聴距離との兼ね合いなども含め、きっちりチェックしている。
編集Oも音は気にしないといいながらも、5.1chサラウンドのシステムには憧れがあるようだ。ではどうして、2人ともサラウンドを自宅にも導入しようとしないのだろう?
編集K:まず、スピーカーの配線が気になるよね。これだと家ではすぐに足を引っかけてしまうし、家族からも不満がでちゃう。
編集O:僕はなんといっても部屋がこれほど広くないからです。
このあたりの反応はしごく当たり前なのだが、6畳のスペースにサラウンドシステムを配置するのはまったく不可能なことではない。配線は悩ましいところだが、対策のしようはある。
実際のところ、2人がサラウンドの導入に踏み切れないのは、リラックスしたムードで5.1chサラウンドを体験したことがない――すなわちサラウンドの本当の魅力を理解していないからだ。
というわけで、読者諸氏も友人や知り合いがホームシアターを持っていたら、ぜひ自分の好きなソフトを持参して体験させてもらおう。基本的にホームシアターを持っている人は自分の音を自慢したい人が多いので、嫌とは言われないはずだ。
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