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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第111回

アーキテクチャーから予測するBulldozerコアの性能

2011年07月25日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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Bulldozerの性能はどの程度になるのか?

 さて、こうしたアーキテクチャーを採用したことにより、AMD FX(Bulldozer)の性能はどう変わるのか? 筆者もいまだベンチマークはおろか、実物も見たことがない状態だが、あえて推測してみたい。

 まずIPCそのものに関して言えば、同一周波数のPhenom IIと比較して、若干落ちる可能性が大きい。「若干」というのは、Phenom IIの3ユニット構成の実行ユニットが、どの程度の利用効率で動いているのかにも関係してくる。Bulldozerの構成は、実行ユニットの数を減らしても利用効率を上げる方向性になっている。だから、Phenom IIの利用効率が50%で、Bulldozerが75%だとすれば、トータルとして同程度のIPCになる。

 だが、いくらなんでも75%まで持っていけるかどうかは、非常に疑わしいところ。せいぜいが60%とかその程度ではないかと、筆者は考える。だとすれば、Phenom IIが50%×3=150%なのに対して、Bulldozerは60%×2=120%というわけで、若干IPCが落ちると想定するのが無難だろう。

 その一方で、同じTDP枠という前提で考えれば、おそらくBulldozerの性能が上になると思われる。先ほども触れたとおり、Bulldozerはワット性能、つまり消費電力あたりの性能改善に力をいれているからだ。結果として同一周波数であれば、Bulldozerの消費電力は明確にPhenom IIより少なく、また動作周波数を上げた時の消費電力のあがり方も、Phenom IIより少ないと予想されるからだ。ポイントはデコーダ部を共用にしたことにある。

 昨今のプロセッサーの中で、単一ユニットで一番消費電力が大きいのはデコーダ部だ。特にx86のように複雑な命令体系の場合、デコーダの消費電力はかなり大きくなる。ケースバイケースだが、x86系プロセッサーの場合は「CPU全体の消費電力の3割以上がデコーダ部によるもの」とさえ言われている。

 このユニットが共用というのは、つまり一番消費電力が増えやすいユニットの数が半分になるということである。従って、同じ消費電力ならばBulldozerの方がずっと、動作周波数を上げやすいことになる。実際にはPhenom II系は45nm SOIプロセスで、Bulldozerは32nm SOIプロセスとプロセスが異なるから、同一に比較するのは正しくないかもしれない。

 だが、同じ125W TDPで比較した場合、「Deneb」コアの「Phenom II X4 980T」が2年半ほどかけてSpeed Yield(どの程度の周波数で動作するかの平均値)を改善し続けた結果、やっと3.7GHzに到達した。それに対して、「AMD FX-8150」ではいきなり3.8GHz(Turbo時4.2GHz)からスタートと予想されるあたりからも、これが裏付けられる。おそらく米GLOBALFOUNDARIESの32nm SOIも、当初はそれほどSpeed Yieldが良いとは思えない。そのため正確を期すならば、比較対象は2009年1月に登場した「Phenom II X4 940」にすべきかもしれない。X4 940の動作周波数は、たかだか3GHzでしかないので、差はさらに広がる。

 しかもFX-8150は4モジュール/8コア構成と、コア数は2倍にもなる。消費電力面では、プロセスの優位はコア数の増大で相殺されるかもしれない。BulldozerはPentium 4のような、高動作周波数を狙ったアーキテクチャーには思えない。だが元の消費電力が低く、動作周波数を上げても消費電力の増え方が鈍いのであれば、動作周波数を引き上げやすく、ここで性能を稼ぐという具合になると思われる。

 そういう意味でBulldozerは、シングルスレッド性能が要求されるアプリケーションでの劇的な性能改善は望み薄かもしれないが、トータルとしての性能は結構期待できるのではないか? これが現時点での情報を元にした、筆者の推測である。

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