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秋の新製品リリースやアジア市場への積極進出にも触れる

アップルが純利益2倍の第3四半期決算—iPhoneとiPadが貢献

2011年07月20日 18時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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アップルの拡大戦略と海外シェアの増大、
成長市場はアジアに

 アップルによれば、現在同社の売上の62%が海外市場からのものだという。詳細は四半期報告書「Form 8-K」の最新版で確認できるが、地域別の営業利益で南北アメリカ地域が63%の年成長率なのに対し、日本が66%、欧州地域が71%、そして日本を除くアジア地域がなんと247%の成長を記録している。

 金額ベースでも、昨年2010年の第3四半期に日本の2倍程度だったアジア全体の売上が、今期は4倍にまで拡大しており、ティム・クック氏も「中国とアジアがアップル成長の鍵」であると明言している。

 中国市場進出には相応のリスクが伴うが、一方で売上を大きく加速できる可能性も秘めている。実際、ここ数年のアップルは積極的に中国市場開拓に邁進しており、北京と上海に立て続けにApple Store店舗をオープンさせている。同社のアジア市場開拓における拡大戦略の軸のひとつはApple Storeの積極展開で、今年中にも新規に30のリテールストアをオープンさせる計画だという。その店舗のひとつが香港1号店になるとのことだ。

 香港に今まで店舗がなかったこと自体が驚きだが、考えてみればアジア各都市でのアップル製品の扱いは代理店に委ねられており、先進国の欧州でさえつい最近までApple Storeがほとんど展開されていなかった。今後は、アジア諸国の大都市でApple Storeが街のランドマークとして注目されるケースが増えるのかもしれない。

 そしてアジア戦略のもうひとつが、iPhoneの販売パートナー獲得だ。アップルは2009年10月にChina Unicomとの提携で中国市場へと進出を果たしているが、同社は数ある携帯キャリアのひとつであり、潜在ユーザー数だけで数億といわれる中国市場を攻略するには不十分だ。

 だが、Wall Street Journalが7月19日に掲載したレポートによれば、アップルは現在China Mobileとの提携交渉を進めており、早ければ1年以内にもiPhone販売がスタートすることになるという。

 2億弱の契約ユーザー数の第2位キャリアであるChina Unicomに対し、同国トップのChina Mobileはその3倍の6億ユーザーを抱えている。iPhoneを購入できる層が(金銭的理由から)限定されていたとしても、その母数は膨大だ。

 問題は、China UnicomがGSM/WCDMA系列のキャリアなのに対し、China Mobileは2GにGSM、3Gには独自規格のTD-SCDMAを採用するキャリアである点だ。アップルが中国市場向けに専用のiPhoneをチップから含めて調達する必要があるが、これだけの市場規模があれば十分に元はとれると踏んでいるのだろう。

 また、リリースタイミングの関係から、TD-SCDMAだけでなく、現在China Mobileが試験運用を行なっている4G規格のTD-LTEがiPhoneで採用される可能性があるともWSJは指摘している。もし本当に1年以内の製品投入が可能であれば、アップルにとって非常に大きな飛躍だ。

そして話題は後継者問題へ

 この決算報告が行なわれる1時間半ほど前、WSJが「Some Apple Directors Ponder CEO Succession」というニュース速報を配信した。

 現在、CEOのスティーブ・ジョブズ氏が病気治療のためにフルタイム勤務から離れ、重要な意志決定事項にのみ経営に関与するというスタイルを採用している。アップル経営メンバーの一部では、すでにCEOの後継者探しに向けてヘッドハンターへの打診を行なっているというのが関係者の話だ。企業名や人物は特定していないが、後継者として接触している人物の1人は、ある著名なIT企業のトップだという。

6月に開催されたWWDC 2011基調講演で壇上に立つスティーブ・ジョブズ氏

 この話の確度と、実際にどれだけアップルが後継者人事に積極的に動いているのかは不明だが、業界でも最も強力なCEOの後継者問題がアップルにとってのアキレス腱になっているのは多くが認めるところだ。

 新世代スマートフォンやコンシューマー向けタブレットという分野を開拓することで市場をリードし、アジア市場でのシェア急拡大で業績の見通しも比較的明るいアップルだが、こうした内部事情を抱え、今後どのように展開していくことになるのだろうか?


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