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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ

Androidに至るモバイル進化の系譜

2011年07月20日 07時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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そしてモバイルの進化は
いま岐路に立っている

 それぞれのプラットフォームごとに歴史があるわけだが、その中でAndroidの歴史は少し変則的である。Androidは、その前身というべき端末が、Danger社の「HipTop」(T-Mobileの「SideKick」)である。その開発の中心人物であるアンディ・ルビン(Andy Rubin)氏がAndroid社を設立。そのAndroidが2005年にGoogleに買収されて、現在に至るのだ。

系統の分岐

Androidの前身にあたるといえるDanger社の「HipTop」。Androidと同じ「ホーム」、「メニュー」「戻る」の3つのボタンである点に注目

 ちなみに、Danger社にはソフトバンクの関連企業が出資していた。Andy Rubinが独立したのはほぼ同時期で、もしこの2つの事象が関係しているとすると、孫正義氏はiPhoneとAndroidの対立図式のきっかけをつくったことになる。その後、マイクロソフトがDanger社を買収、若年層向けの端末「KIN」というシリーズを開発するが、結局販売中止となった。だがその技術は、Windows Phone 7に受け継がれることになる。

 こうやってモバイルの歴史を俯瞰すると、確かに、Palmが初期にたどった道のりは、Androidの今に似ていることがわかる。「BrackBerry」がいかに独立した存在であったかということもわかる。そして、歴史上ヒットしたモバイル端末には、何らかの“入力”や“操作”の工夫があることにも気が付くだろう(Palmの文字入力、BlackBerryのキーボード、iPhoneのマルチタッチや俊敏なレスポンス、など)。

 しかし同時に、モバイルが今後どの方向へ行くのか、大きな岐路を迎えようとしていることも強く感じられる。

 セッションでは、山田達司氏が、7月1日に米国で発売されたばかりの「TouchPad」というタブレット端末を披露してくれた。これはHPの製品で、Palmによる「WebOS」という新しいプラットフォームで動作している。

 WebOSの操作性のよさは、すでに米国では一昨年に発売されている「Palm Pre」で高く評価されている。しかし、重要なのはその名前のとおり、OSレベルでクラウドコンピューティングを前提としている点だ。

 これまでスマートフォンの歴史を動かしてきたのは、手の中に入るためのデザインや大きさなどの「意匠」と「操作性」、それにまつわる「特許」、「開発者コミュニティ」の存在だった(実はその延長線上にアプリという概念があるのかもしれない)。その比重は少しずつ変化していき、今後それらはあまり重要ではなくなっていくのではないか? というのが、セッションでのわたしなりの結論だった。

 たぶん、意匠や操作性などに取って代わる存在は、コミュニケーションのスタイル自体がソーシャルになった時代の、そのベースとなるクラウドなのだろう。そうなったときの端末は、もはやただの画面と言うべきもので、電話という概念が消失するということ、かもしれないが。


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