このページの本文へ

四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第65回

古川本舗「Alice in wonderword」インタビュー

ニコ動“歌い手”と野宮真貴・カヒミが共演、その理由は

2011年07月16日 12時00分更新

文● 四本淑三

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

3.11にスタートしたレコーディングの顛末

古川 レコーディング初日が、あの地震だったんですよ。

―― えっ、3月11日の?

古川 レコーディングは足立区の綾瀬にある「カフェオレーベル」(Cafe au Label)というスタジオだったんですけど。僕、いま家が東京じゃなくて、そこに通うのは無理だなというので、1ヵ月くらい近所にマンションを借りることにしたんです。それで引っ越して、寝て起きたら地震ですよ。

カフェオレーベル。くるり「東京」「虹」などのレコーディングスタジオとして知られる

―― その初日はレコーディングしたんですか?

古川 初日は飛ばしました。ただ、とりあえず何はともあれやりましょうという方向でやっていたんですけど。あの時、自粛ムードとかあったじゃないですか。節電とか。

―― ありましたね、プロ野球の開幕戦をどうするかみたいな話が。

古川 とはいえ仮に止めたとしても何が変わるわけでもないし。今となっては大げさな話ですけど、これで自分が死んだりでもしたら、たぶん化けて出るんだろうなかと思ってました。

―― 余震が続く中でのレコーディングは厳しいですね、輪番停電もあったし。

古川 スタジオは足立区だったんで、停電は関係なかったんですが、あの自粛ムードをどう考えるか、やるべきか止めるべきかで悩んでいましたね、毎日。自粛せよという気持ちもわかるし、かと言って自粛して何になるのという。

―― 11日以前はどういう感じでスケジュールを組んでいたんですか?

古川 録りは3月中にすべて終わり、4月にミックス、5月頭にマスタリングという感じで組んでいましたけど、11日の時点で真っ白でしたね。

―― 時間的な余裕は?

古川 この日はドラムとか、ベースはここまで録ってとか、一日毎に決めていたので、ひとつズレると結構やばいという状態でした。まどリロなんかは日本に来てもらっていたところだったので、スケジュールをずらすこともできなかったし。

まど@実写リロ/Madoka Uenoさん(YouTubeチャンネル)

まどリロ : まど@実写リロ、Madoka Uenoさんのこと。アルバムには「Good Morning EMMA Sympson」にボーカリストとして参加。アメリカ生まれの日本人で、現在カリフォルニア在住

―― ううむ、それは胃が痛くなりそうな話ですね。

古川 11日の時点で、まどちゃんもカリフォルニアからこっちに来ていたはずだったんですよ。だけど飛行機が着陸できないものだから、電話したら「いま北海道にいます」って言われて。千歳に飛ばされたって。ああ終わった、これで色々終わったと、思いましたけど。

―― ということはトラックの録りが終わってボーカリストたちがやってくる、という順番ではなかったんですか?

古川 テンポだけ決めておいて、パーツ録りみたいな感じで進めないと、スケジューリングも噛み合わない状態だったんですね。なのでアコギとベースとクリックだけの状態で歌を入れてもらうようなこともありました。

―― それは歌う側も大変だったと思うんですけど。

古川 そういう変則的なやり方でも、みんなすごい頑張ってくれて。ほとんどが僕の曲を歌ってくれているのを聴いて、お願いしたいと判断した人たちなので、前提としての曲に対する理解があったんだと思いますが、正直助けられてばかりでした。ただ、演奏隊に関しては、レコーディングの前半は不安そうな顔をしていましたね。4月に入ってある程度仮ミックスが聴かせられる状態になって、ああ、こうなるんですか(安堵)みたいな。

―― じゃあスケジュールが詰まって、後ろにしわ寄せが行って大変ということは?

古川 なかったですね。地震が起きてすぐは、無事終わるかどうか気にしながらやっていたんですけど、ある瞬間から気にしなくなって。それ以降はもともと決めてあったスケジュールを確実に成功させることしか頭にない状態で。

―― 3.11以降のアルバムということになりますけど、内容には影響を及ぼしてませんよね。

古川 ないですね。3.11以降に作った曲ならそうなるかも知れませんが、もともとあるものをパッケージングしたわけで、震災に絡めるのはナンセンスだし。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン