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西日本のデータセンターという選択肢 第10回

ただの放置じゃない!従来型と意外に変わらない充実のスペック

雲出ずる国にIIJのモジュール型データセンター現わる

2011年07月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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外気冷却を全面採用したITモジュール「IZmo」

 松江データセンターパークの主役ともいえるITモジュール「IZmo(イズモ)」は、一般のデータセンターと同等の内部スペースを確保した「IZmo W」と大型トラックで輸送可能な「IZmo S」の1台ずつ設置されていた。ちなみにIZmo Wの方は、先日の「クラウドコンピューティングEXPO」で展示されたものと同じだ。

一般的なデータセンターと同様の内部スペースを確保したIZmo W

 両者とも、コンテナの縦方向に並べられたラックでホットアイルとコールドアイルを区切られている点は同じ。Izmo Wは46Uラックを9/10ラックで、IZmo Sは42Uラックを9ラック設置されている。IZmo Sが事前申請の必要なトレーラーではなく大型トラックで輸送できる横幅にするため、ラックが傾斜配置されているのが特徴となっている。とはいえ、ラックが傾斜配置されているIZmo Sは、作業スペースが限られているため、エンジニアはトレーラーじゃないと運べないIZmo Wを好む傾向があるとのこと。コンテナあたりの供給電力は90kVAで、ラックあたり10kVAの実効電力が供給される。

ラックが傾斜配置されたIZmo Sは作業スペースがあまり確保されていない

 欧米では一般的になりつつあるこうしたコンテナ型データセンターだが、従来は建築物としての法規制が存在していたため、国内での建設自体が難しかった。しかし、2011年の3月に国土交通省から出された助言により、コンテナ型データセンターが建築物の要件が示された。具体的には、データセンターとしての最低限の設備のみを有しつつ、稼働時は無人で、機器の重大な障害発生時をのぞき内部に人が入らないという要件を満たすことで建築物ではなく、貯蔵槽に類する施設として扱われるというものだ。IZmoは、日本で初めてこの要件を満たすもので、前述した遠隔管理の仕組みもこの要件を満たすべく開発されたものだという。

IZmoには監視カメラやインテリジェントコンセントバー、温度センサーなどが設置されている

 IZmo内にはラックは監視カメラのほか、IZmo内に立ちいらずに機器単位の電力測定が可能なインテリジェントコンセントバー、温度センサーなども設置され、すべて遠隔管理できる「IZmo管理システム」が導入されている。

 また、ITモジュールでは省エネに大きく貢献する外気冷却が全面導入されているのも大きなトピックだ。夏期は冷却ユニットとファンを併用した通常のデータセンターと同じ冷却を行なうが、冬季は冷たい外気とIT機器の排熱を混合することで寒すぎない温度に調整、それ以外はファンユニットのみを使った外気冷却を行なう。ITモジュールの背面には空調モジュールでは、こうした異なる運転モードを自動的に切り替え、最適な動作を実現する。

IZmoの背面に直結された空調モジュール

空調モジュール同士が相互接続されており、冗長性を確保している

 外気冷却の効果に関しては、2009年から実証実験を進めており、2010年の夏期は冷却ユニットを動作させず、ファンだけで運用してみた(外気冷却モード)という。しかし、IT機器自体のファンの風速が上がったことで、電力も上がってしまった。冷却ユニットの節電分を、IT機器の消費電力で食ってしまう結果となり、トータルの消費電力は期待ほどには下がらなかったわけだ。

 現在はIT機器や空調設備がモジュール化されているが、今後は電気設備もモジュール化し、建設物は最低限なもののみにする予定。「さまざまなものをモジュール化し、他社のモジュールも設置できるようにしているので、『パーク』という名前を付けた」(久保氏)という。パーク内に全部で24台備え付けることができるが、年内には埋まる見込みとなっている。

電気設備棟を挟む形で12台ずつのITモジュールが設置できる。ここも年内に埋まる予定

 ちなみに、このITモジュールはどのように運ぶのだろうか? 今回の場合、静岡県の工場でコンテナを作って、福島県のサーバーベンダー(富士通)の工場に運んでIT機器をキッティング。そして、キッティングしたコンテナを陸路で松江に運ぶというプロセスだったという。1000台単位のサーバー受注でも、コンテナ開発からサービスインまで約3カ月で済むとのこと。当然、サーバーをキッティングした状態で運ぶことで衝撃等はないのかという課題もあったが、エアーサスペンション付きの車で実際に運ぶことでベンダーのサポート内の衝撃で済むことがわかった。富士通のほか、HPとNECもこうしたキッティングまでおねがいするパートナーとして協力を得ているという。

コンテナの作成からキッティングを経て、松江まで運ぶ

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 松江データセンターパークは4月に開設されたばかりで、本データセンターを使った「IIJ GIOプライベートHaaS(Hardware as a Service)」もスタートしているが、すでに埋まる見込みが立ちつつあるため、次の建設計画も進める予定。今後は、ラックあたりの実効電力を増やすほか、IT機器とITモジュールの統合や連携、自然エネルギーなどの導入を進め、よりクラウドに最適化していくという。とりあえず現在のデータセンターパークの前に土地の優先利用権を確保しているが、分散のために他のロケーションを選ぶ可能性もあるとのこと。

データパークの前の用地も優先利用が可能になってはいる

 3・11の大震災以降注目を集める地方型データセンターのモデルケースとして、今後も注目を集めそうだ。

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