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Microsoft Worldwide Partner Conference 2011レポート

パートナーと共に戦い続けるマイクロソフト

2011年07月13日 09時50分更新

文● 渡邉利和

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7月10~14日の5日間、米カリフォルニア州ロスアンゼルスでMicrosoft Worldwide Partner Conference 2011が開催されている。全世界の同社のパートナーを一堂に集めて、同社の今後1年の大きな方針を示すと共に、過去一年“頑張った”パートナーを労う意味も込めて年一回米国各地で開催されているイベントだ。

今年も健在だった“闘うCEO”

 実質的な初日となる11日の午前には、Vision Keynoteとしてマイクロソフトのビジョンを語る基調講演が行なわれ、同社CEOのスティーブ・バルマー氏が登壇した。5月に品川で開催されたMicrosoft Developer Forum 2011のために来日した同氏はソフトウェア開発者に対する強い愛情を熱烈に語っていたが、WPCではもちろん、その愛情の向かう先は全世界のパートナー各社だ。しかも、その愛は相手にすり寄るような柔和なものではなく、共通の敵を示しつつ「共に闘い、共に勝利しよう」と訴えるいつもながらのエネルギッシュなスタイルである。

エネルギッシュに講演するマイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏

 昨年のWPC2010で、同社はパートナーに向けてクラウドへの全面的な変革をアピールしたが、今年はその延長上にあるメッセージで、少なくとも初日の段階では新発表や意外性のあるニュースは出てこなかった。しかしながら、バルマー氏はGoogle、Oracle、VMware、Amazonといったクラウド分野での競合各社の名前を具体的に挙げつつ、同社自身の取り組みとパートナー各社の支持があれば絶対に勝てるというメッセージを強力に発信し続けた。ステージ上を精力的に動き回り、拳を振り上げて叫ぶように語る同氏の姿は、スポーツチームのヘッドコーチか何かを見ているような印象で、まさに戦いをリードし続ける指導者という印象が変わらなかったことに感銘を受ける。

すべてはWindowsを土台に

 クラウドへの全面的な注力を表明したことで、従来型のソフトウェアの比重が下がったかのようにいわれることもある同社だが、バルマー氏は依然として同社が“Windowsの会社”であることを明確にした。同氏は、「Windows Azure、Windows Phone、Windows Server、Windows 8など、すべてはWindowsを土台としている」ことを指摘し、クラウド時代にあっても同社の技術的な基盤はWindowsであると語る。

 一方で、やはりiPhoneが一足先に普及させたマルチタッチインターフェイスは相当に意識しているようだ。次期WindowsとなるWindows 8(仮称)でも大幅に採用されることが明らかにされているが、会場内でもWindows 7にマルチタッチインターフェイスを組み合わせたデモシステムが使われていた。基調講演開始前にさまざまな音楽とナレーションを組み合わせて会場を盛り上げていたDJが使用していたのは、伝統的なハードウェア・コンソールではなく、大型で半透明のタッチスクリーンパネルだった。

タッチスクリーン版のコンソールを操作して音響を制御するDJ。場面に応じてコントロールの配置や大きさがダイナミックに変わる、といった使い方ならタッチスクリーン化の意味もありそうだが、そういう使い方はしていなかったようなので、ここは昔ながらのメカニカルなスイッチの感触の良さの方に軍配が上がりそうではある。

 DJは、「Windows 7とマルチタッチでDJの仕事も変革された」と繰り返しアピールしていたが、見た目の鮮烈さはともかく、実用性についてはやや疑問が残ったのも確かだ。多分DJにとっては指先の微妙な感覚が生かせるハードウェアスイッチのほうが使いやすかったろうと想像するが、同社のインターフェイス技術がすでにこうした大規模で複雑なデバイスを仮想的に再現できるレベルにまで到達していることを視覚的に派手な演出で実証できた点は企画の勝利だといえそうだ。

 Windowsに関しては、コーポレート・バイスプレジデント兼チーフ・ファイナンシャル・オフィサーのタミ・レーラー氏が説明を行なった。

Windowsに関する説明を担当した同社のタミ・レーラー(Tami Reller)氏

 同氏の説明は主にWindows 7のこれまでの成果の大きさに関するもので、パートナーに対するメッセージも「Windows 7は未来(Windows 8)への経路となる」「Windows 7に今すぐアップデートすべき。今が完璧なタイミング」といったもので、まずはWindows 7へのマイグレーションのビジネスに注力し、来るべきWindows 8にスムーズに移行するための環境を整えようと訴えるものだった。

レーラー氏が示した、Windows 8に関する情報公開の経過。今年1月のCES(Consumer Electoronics Show)で大まかな概要が公表され、次いで6月のThings DおよびCOMPTEX TAIPEIでより詳細な情報が明かされた。次は“build”という意味ありげな名前のイベントが9月に開催される予定だという

 とはいえ、Windows 8についてもそのUIを紹介するなどのデモは行なわれ、さらに今後9月にまたWindows 8に関する最新情報が公開されるイベントが予定されていることや、ハードウェア要件はWindows 7を超えることがないことなども明かされた。

レーラー氏が示した、Windowsのこれまでのバージョンのハードウェア要件の変遷。Windows 8では、Windows 7と同等もしくはそれ以下のハードウェアで動作可能だという。ハードウェアの性能向上がPC市場の駆動力となっていた時代が終わったことを改めて感じさせる図だ。

 同社のクラウド環境の土台もWindowsが担っていることを考えると、Windows 8には単にクラウドにアクセスするためのエンドユーザー向けのクライアントOSとして役割だけではなく、Windows ServerやWindows Azure、Windows Phoneの将来のバージョンを見据えた技術開発の場としての役割も重要なはずだ。その意味で、まもなくと予想されるWindows 8もまた、要注目の重要な新製品であるのは間違いないだろう。

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