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新アプライアンス第1弾のBIソリューションでExadataに対抗

IT導入を迅速にするHPのアプライアンス3兄弟とは?

2011年07月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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7月12日、日本ヒューレット・パッカードは、「HP Converged Infrastructure」を構築するための製品群「HP Converged Systems」を発表し、第一弾としてBI(Business Intelligence)環境を迅速に構築するためのアプライアンス製品を発表した。

震災の例をみるまでもなく「迅速性」は重要

 製品発表会の冒頭、執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 杉原博茂氏は、「多くの日本企業が必要とする「時間短縮(時短)」を実現するために」と題した発表を行なった。まず同氏は、「つながること」により、企業の環境が刻一刻と変わってくる現状を紹介し、企業には迅速な環境適応力が必要だと説明した。その上で、今回のアプライアンスの新製品が同社が推進する「Instant-On Enterprise」を実現するための4要素のうち、ビジネスのニーズに迅速に対応する「Agility(俊敏性)」というキーワードを満たすものと位置づけた。

日本ヒューレット・パッカード 執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 杉原博茂氏

 これに関連し、杉原氏は「震災のような突発的な事項では、発生時にガソリンや食料、原発事故で水、そして計画停電には電池といったように時間が経つごとにニーズが変化し、しかも大量のデータを分析する必要がある」と述べた。こうしたケースでは時間短縮が特に重要になるが、これに対してHPは「3カ月かかるシステムの立ち上げを3時間で、従来のデータ分析に比べて800倍の処理速度を実現できる」(杉原氏)と時短を支援できるとした。

震災関連でも時短がきわめて重要になっている

 次に新製品について説明したサーバーマーケティング統括本部 統括本部長の上原宏氏は、過去に成功と言い切れるITプロジェクトの割合が全体の32%にとどまっている調査を紹介し、その理由の1つとしてアプリケーションの開発に平均18カ月かかっている点を挙げた。

サーバーマーケティング統括本部 統括本部長の上原宏氏

 もちろん、こうした課題の解決策として、あらかじめ検証済みのサーバーやストレージ、ネットワーク、OS、アプリケーション、管理ソフトを統合したアプライアンスがある。各コンポーネントが「密結合」されたアプライアンスは、導入までの期間やコストを劇的に削減する場合もあるが、他社製品との連携やカスタマイズがしにくいというデメリットも存在するという。これに対して、HPは他社との連携も視野に入れた「疎結合」のクラウドアプライアンス「HP BladeSystem Matrix」を提供しており、ユーザーから大きな支持を得ているという。

アプライアンスのメリットとデメリット

 今回の発表は、こうした疎結合型のアプライアンスのラインナップを強化し、システム構築を数ヶ月から数時間へ時短を実現するというもの。具体的には、「Converged Infrastructureの対象を上位アプリケーションのレイヤまで拡げた」(上原氏)ということで、仮想化インフラを提供するHP VirtualSystem、クラウド環境を提供するHP CloudSystem(旧HP BladeSystem Matrix)、特定アプリケーションを提供するHP AppSystemの3製品を用意した。「われわれは3兄弟と呼んでいる」(上原氏)というこれらのアプライアンスを用いることで、システムの立ち上げ時間を大きく短縮できるという。

まずはBI&データウェアハウスから

 最後にサーバーマーケティング統括本部 ビジネスクリティカルシステム製品本部 寺崎孝氏がHP AppSystemの第一弾として発表された2つのBI&データウェアハウスアプライアンスを紹介した。

日本ヒューレット・パッカード サーバーマーケティング統括本部 ビジネスクリティカルシステム製品本部 寺崎孝氏

 「Vertica Analystics System」は、統合した大容量データのリアルタイム分析に特化したアプライアンス。HPが3月に買収したヴァーティカのデータウェアハウスを、HP BladeSystem(ブレードサーバー)やMDS(ストレージ)、HP ProCurve(スイッチ)などと組み合わせることで、1つのBiシステムとして統合している。製品はクオータラック、ハーフラックフルラックの3モデルが用意されており、「取りこんだデータ量にあわせて課金が発生する」というユニークな課金体系を用意している。

高い検索性能や大容量に対応するVertica Analystic Systemの位置づけ

 また、インメモリDBやSSD、InifiniBandなど特定ハードウェアに依存しないデータ分析の解析手法を採用している点も売りだ。寺崎氏は、「カラム型DB、データ圧縮、MPPなどソフトウェア的な高速手法のみを採用することで安価に高速なパフォーマンスを実現できた」と述べる。

 もう1つの「HP Business Data Warehouse Applliance」は、HPのハードウェアにマイクロソフトのデータウェアハウス製品を組み合わせたもの。従来、HPとマイクロソフトは5~80TB程度を想定したデータウェアハウスのリファレンス構成を提供する「HP SQL Server FastTrack Data Warehouse」や、500TBを越える「HP Enterprise Data Warehouse Appliance」などが提供されている。

新製品のHP Business Data Warehouse Appllianceで5TBまでの容量に対応する

 今回のHP Business Data Warehouse Appllianceは、Windows ServerやSQL Serverなどを搭載しており、5TBまでの容量をサポートする。価格は3年間のサポート付きで665万7000円(税込)。分析や意思決定支援を可能にするHP Business Decision Appilianceと組み合わせることで、同じく3年間のサポート付きで1000万円程度に抑える予定となっている。ちなみに両者ともSQL Serverのライセンスは含まれていないが、これは既存のボリュームライセンスを利用するためにあえて外してあるという。

 アプライアンスというと確かに容易な構築や時間短縮というメリットが強調されるが、エンタープライズの領域においてはカスタマイズや既存リソースの利用が必要になるのも事実だ。こうした点で、「疎結合型」のアプローチに手応えを感じた同社が、より上位のレイヤにまでアプライアンス化を目論んだのも自然な流れといえる。もちろん、HPのデフォルト推奨構成がもっともチューニングが行き届いてるという点もアピールしており、水平分業というモデルではないのも明らかだ。

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