インターネット消費の一般化とともに拡大を続けるEC業界。だが流通大手やメーカーの相次ぐ進出で、生き残りは厳しさを増している。他を寄せ付けない“強いECサイト”は何を考え、何を実行しているのか? いま注目のECサイトの運営者に、EC事業の戦略から具体的なマーケティング施策まで話を聞く。(編集部)
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- ファッション/アパレル
- 家具/インテリア
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たった1枚の白いワイシャツも、襟型の違い、素材の違い、カフスの違いなどによって、何百、何千通りのデザインができあがり、それぞれの表情はずいぶん異なる。2002年にオープンしたワイシャツ専門店『ozie(オジエ)』は、すべての商品を自社で企画し、そのほとんどを数量限定で販売するECサイト。バリエーションの豊富さは、トップページを見れば一目瞭然だ。
「ワイシャツは、『シャネルの〇〇番』などと指名買いする商品ではありません。『なにかいいワイシャツはないかな?』とサイトを訪れるお客さまに、『うちは、これだけのデザインの商品が揃っていますよ』とアピールして、初めて興味を持ってもらえます。そこで、2004年からは、最低でも週に1種類は新商品を出す! という“ノルマ”を自らに課しています」(店長の柳田敏正氏)
毎週発売される新商品はすぐさまメールマガジンで顧客に告知する。ワイシャツは季節によって需要が大きく変動するので、2月の閑散期は週に1、2種類の新商品をアップ、長袖・半袖の両方が揃う6月の繁忙期は多いときで20種類もの新商品を投入するという。
随時、新商品を企画し、小ロットでもすぐに形にできるのは、母体である(株)柳田織物がもともと大正時代から続くシャツ専業メーカーであり、国内外に製造委託工場を持つ事業基盤があったからだ。
「それでも、毎週欠かさずに新商品をアップし、6年続けるのは正直骨が折れました。繁忙期に、新たな商品を10点、20点とアップするときは、スタッフが悲鳴を上げ、職場は“戦場”と化します(笑)。だけど、地道にコツコツと努力した結果、『常に新しいデザインのワイシャツが手に入る』とファンになってくれるお客さまが確実に増えました。それをモチベーションにモノ作りに励んでいます」
現在、ネットショップで販売する商品は、シャツだけで常時500点以上。ネクタイなどの小物も合わせれば1000点を超えるまでになった。
ozie(オジエ)
- 運営会社:株式会社柳田織物
- オープン:2002年
- 従業員数:15名(うちネット通販事業専業5名)
- 年商:1億4000万円(EC事業のみ)
1970年創業(前身は1929年創業)の柳田織物が運営するワイシャツ販売の専門サイト。バーニーズニューヨークで接客経験を磨いた4代目の柳田敏正氏が中心となり、2002年にオープン。2011年1月、全面リニューアル。