「安さよりも信頼」へのニーズが増す
ネットショッピングサイト
模倣サービスが出る背景としては、インターネット機能が付いたテレビのコンテンツに政府が“待った”をかけたり、ネットカフェを国営化しようとするなど、海外サービスでなく手の内の国内サービスで言論コントロールをしたいという意図がうかがえる。
模倣ネットサービスばかりの中国で圧倒的に人気のオンラインショッピングサイト「淘宝網」は、数少ないオリジナリティある人気サイトだ。
同サイトの人気は、とにかく安さを徹底して求め、気に入れば口コミで利用者を増やす消費者の行動に起因する。日本の商品が買える楽天中国版の「楽酷天」やヤフーショッピングと提携した「淘日本」は、筆者も試しに購入してみたが値段が高く、また話題にもなっていない。日本からの商品輸入は淘宝網が人気だ。
ただし、品質や信頼を重視した淘宝網の兄弟サイト「淘宝商場」が人気になるなど、「安さよりも信頼」へのニーズが増してきたことから、楽酷天や淘日本が今後認知され、人気を博す可能性はある。
都市部でも農村部でも携帯電話が普及
サービスが模倣なら、ハードウェアも後出しでそっくり製品を出してくることが多い。主要ICチップを半田付けし、そっくり製品となるようなカバーを量産。激安価格でリリースされる携帯電話こと「山寨機」がその代表格だ。
中国の社会では携帯するガジェットでステータスが決まるので、都市部の消費者には山寨機は不評であるが、農村部の人々には売れている。
農村部で売れた結果、誰もが携帯電話を持ち、いざとなればITの力で期間工が結束する事例も出てきた。
とはいえ、基本的には農村部にしても都市部にしても、パソコンやiPhoneを手にしたところで動画やゲームなどの娯楽目的ばかりで利用する点は共通している。
一方で、ビジネス用途でも個人がIT(デバイス)を積極的に活用する他国とは異なる。ともかく、そんな山寨機の卸売市場的な深センは、北京の電脳街とも上海の電脳街とも、そのほかの都市とも異なる世界でも例を見ない異色の電脳街だ。
成功例をバネに中国独自規格を普及させられるか!?
模倣製品に比べて、いまいち鳴かず飛ばずなのが技術立国を目指すべく次々に登場する中国独自の規格とその対応製品だ。
3G方式のひとつである「TD-SCDMA」や、中国版DLNAの「IGRS(閃聯)」、中国版HDMI規格「DiiVA」、光ディスクの「EVD」など、当連載でも積極的に紹介してきた。
その多くが普及せずに失敗した独自規格の中で、TD-SCDMAは一定の成功を収めた。今後はTD-SCDMAで学んだ“普及の方程式”を使って、様々な規格を普及させるかもしれない。
というわけで、駆け足で他国にない中国のITの特殊性を紹介したが、実は本連載、今回で一旦終了となる。
次回からは新連載として開始することになるが、今後は少し視野を広げてアジア全般に目を向け、様々な国のIT事情にスポットを当てていきたいと思う。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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