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「WebLogic Server」「Coherence」「Java SE」の最新動向を紹介

世界最速を目指すオラクルのミドルウェア展開

2011年07月04日 06時00分更新

文● 渡邉利和

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7月1日、日本オラクルは同社のミドルウェア事業における製品戦略についての説明会を開催した。話題として取り上げられたのは、同社のFusion Middleware事業統括本部に属する「WebLogic Server」「Coherence」「Java SE」の3製品

ミッションクリティカル領域を目指す

 まず登壇した同社のFusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアディレクターの清水 照久氏は、オラクルのアプリケーション実行基盤の全体像を紹介した。

日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアディレクターの清水 照久氏

 下図に示された製品群は、元々はデータベースを対象とした運用管理ツールだったものがアプリケーションレイヤまでシステム全体をカバーするまでに成長した“Enterprise Manager”以外の全製品が企業買収によって獲得したものだという点で同社の積極的な買収戦略を端的に示すものとなっていた。実際、データベースから始まり、ミドルウェアからアプリケーションへと段階的に事業領域をより上位レイヤに向けて拡大してきた同社の強みは、買収した製品を上手に自社のポートフォリオ内のしかるべき場所に当てはめていく能力であろう。

オラクルのアプリケーション実行基盤

 この中で清水氏が紹介を担当したのは、アプリケーションサーバ「WebLogic Server」についてだ。WebLogicは旧BEAシステムズの中核製品であり、エンタープライズ市場では大きなシェアを誇っていたJava Web Application Serverだ。同氏はWebLogicについて、「ミドルウェア製品群の中でももっとも成長著しい」と紹介しており、以前からの高評価がそのまま引き継がれていることを明かした。

 WebLogicでは、中核的な役割を担うJava実行環境として独自のJVMであるJRockitの高速性がBEAシステムズ時代から高く評価されていた。今後もこの強みをさらに伸ばしていく方向で、同氏が示した今後の方向性は「高度な耐障害性、運用管理性が求められるサービス基盤としてのミッションクリティカル性」と「大量のアクセスデータを処理する社会基盤としての高速性」の2点となる。

オラクルのOracle Exalogic Elastic Cloud

 同氏はWebLogicの高速性について「各種ベンチマークでも実証されているとおり、世界で一番速いアプリケーションサーバ」だという。この高速性能を活かす分野として同氏が挙げたのが、「大量のアクセスデータの処理が必要な領域」だ。そのための実行基盤として開発されたのがExadataに続いて市場投入された「Oracle Exalogic Elastic Cloud」ということになる。

拡張可能なメモリグリッド

 続いて登壇した同社のFusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネジャーの杉 達也氏は、「Oracle Coherence」の現状について紹介した。

日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネジャーの杉 達也氏

 Coherenceはインメモリ型データベースで、ディスクアクセスが発生しないことによる高速性を活かし、Oracle Databaseのキャッシュとして前段に置かれるなどの使われ方が提案されてきたものだ。複数のインスタンスを緊密に連携させることで、あたかもメモリ領域が物理サーバーの境界を越えて拡張できるかのように見せることができるため、同氏はこれを指して「拡張可能なメモリグリッド」と表現する。

拡張可能なメモリグリッドで変わること

 Coherenceの活用例としてよく知られるヨドバシカメラの事例では、オンラインコマースサイトに一時的に大量のアクセスが集中するような場合にも余裕を持って対処可能とするためにこの高速性を活かしている。一方、楽天の事例では、前段のCoherenceが安定稼働している場合にはバックエンドのOracle Database側にアクセスが行かなくなることを利用し、バックエンドのデータベースサーバーのメンテナンスの際にもサービス自体は無停止にできるという可用性向上のために活用しているという。杉氏はこれを「Coherenceによってアプリケーションとデータベースを分離できる」と表現する。

NTTぷららの課金処理での事例

 さらに同氏がユニークな事例として挙げたのがNTTぷららの「ひかりTV」の課金処理でのCoherenceの活用だ。これは、ユーザーごとの課金データの集計を短時間で行なうための並列演算システムとしてCoherenceを活用した事例で、従来はバッチ処理で15時間を要していた集計処理が2時間弱で完了するようになったという。杉氏は、「大量データに対して高速に演算処理ができる、という点はユーザー企業にとって差別化要因となる」と指摘している。

JRockitの無償提供

 最後に、同社のFusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネジャーの伊藤 敬氏が、オラクル製品としてのJava SEについて紹介した。Java SEは、もともとはStandard Editionの意味であり、モバイル向けのME、エンタープライズ向けのEEとの区別のために付けられた名称だ。オラクルは以前からJava EEの仕様策定や実装などに関しては積極的に貢献してきたが、サン・マイクロシステムズの買収によって中核仕様であるSEもオラクルの管理下に入った。

日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネジャーの伊藤 敬氏

 従来、Javaの基本的な環境はJDK(Java Development Kit)として無償配布されてきたが、この点は今後も変わらない。同社ではこの無償版を「Java SE」と呼ぶが、従来の構成に加えて新たに高速JVMとして評価の高いJRockitをJDKに標準添付し、無償配布するという。JRockitはIAプラットフォーム上でのサーバーサイドでの利用に最適化することで高速性を実現しているという。そのため、汎用性を重視したSun JVMを完全に置き換えられるものではないことから、JRockitは追加提供であり、従来のSun JVMの配布も引き続き行なわれることになる。さらに、有償版として、無償版のJava SEに有償サポートを加えた形の「Java SE Support」、ミッションクリティカル向けの付加機能として「JRockit Mission Control」と「JRockit Flight Recorder」を加えた「Java SE Advanced」、さらにリアルタイム機能を強化のために「JRockit Real Time」を付加した「Java SE Suite」が提供される。

Java SEのパッケージング

高速性と安定稼働のためのOracle JRocket JVM

 これらのミドルウェア分野での製品戦略すべてに共通するキーワードは「高速性」だろう。WebLogicおよびJava SEでは、共通モジュールとしてJRockitが高速性を担っているわけだが、Coherenceもまずは速度面でのアドバンテージを誇る製品だ。クラウドの普及によって、従来よりも少数かつ大規模なデータセンターに大量のトラフィックが集中する状況になっていくことは容易に想像できる。また、スマートグリッドに代表されるような、インテリジェントなセンサーを大規模に遍在させることで従来とは比較にならないほどの大量のデータをリアルタイムに収集し、これを高速に解析することでより緻密で高精度な処理を実現していこうというトレンドも顕著になってきている。オラクルの戦略は、こうしたトレンドに対してデータ処理を担うインフラが備えるべき機能としてまずは高速性を重視し、対応策を準備する、という形で展開されていることがうかがえる。

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