コンタクトページを出発点にさまざまな情報を得る
次に、コンタクトページ以外のページを考えていきましょう。
最初のうち「運動して血圧を下げよう」と思っていたユーザーは、用意したコンテンツによってウォーキングを学び、やる気が出たとします。そうなればこの健康情報サイトへの信頼も高まっていますから、次の段階で、連携する他の高血圧対策の記事に目が行きます。ウォーキング以外の情報から、次第に「大切なのは運動だけではなく、生活習慣そのものの改善か!」と分かってくるでしょう。
そうなれば、「食事」「睡眠」「ストレス」など、ユーザーはさまざまな角度から高血圧と向き合えるようになっていきます。高血圧への対応もポジティブになり、病院へ相談に行ったり、同じ悩みを持つ人のブログから運動方法や健康対策を学んだりできるようになるでしょう。
ここでようやく、高血圧対策の1つである健康食品の情報を届けるタイミングが訪れます。すでに高血圧への理解が深まり、サイトに対する信頼も高まっているので、B社の製品情報もモチベーションを維持したまま読んでもらえるわけです。
以上が、ビリヤード理論を使って具体的なコンテンツの作り方です。もちろん、実際には情報を得る順番はユーザーによって異なりますし、ユーザーによっては見ないで飛ばすページもあります。また、血圧ひとつとってもユーザーの興味はさまざまですから、実際にはいくつものコンタクトページを用意しておく必要があります。たとえば「高血圧+塩分」「高血圧+食事」「高血圧+注意」など、ユーザーの興味を検討しましょう。
こうしてでき上がった健康食品のコンテンツ(事実上、高血圧のポータルサイト)は、同じユーザーが何度も繰り返しアクセスする息の長いコンテンツになりました。制作してからずいぶん時間がたちますが、アクセス数が落ちることもなく、Googleなどの検索エンジンでも上位に位置しています。
企業サイトではすべてのページで「コンタクトポイント」を意識すべき
今回紹介した方法は、企業サイトのマネージャーのみなさんから見れば、コンテンツの接点から製品紹介まで非常に時間がかかり、回りくどい説得方法に思えるかもしれません。「もっと早く効果を出したい」と考えても当然です。
しかし、ネットの普及とともに自分で調べ、理解したうえで商品を購入する行動が消費者にとって当たり前になっています。自身の行動を思い返してみても、今ではまったく予備知識がないまま、テレビCMに流されて商品を購入するケースは少ないのではないでしょうか。
企業サイトにおける理想は、細分化されたターゲート(顧客)の興味をさまざまなコンタクトページで受け止める設計だと私は考えています。企業サイトのすべてのページには、「ユーザーとのコンタクト」という視点が求められるのではないでしょうか。
前回の記事も読み返しながら、自身が運営する企業サイトでの応用法を考えてみてください。
『“興味”を意識したサイト設計で、ユーザーの心を揺らすサイトになる』
著者:小池 勉(こいけ・つとむ)
株式会社コンテンツブレイン 代表取締役。Webマーケティングプランナー。家電、自動車からアパレル、食品、ブライダル、クレジットカード、PCメーカー、部品メーカーまでさまざまなジャンルのサイトプランニングを数多く手掛ける。またWebにおけるCRM戦略の立案、アイトラッキングを活用したWebコミュニケーション効率化なども行なっている。
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