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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第63回

いま“もっとも評価されるべき”歌い手・花近

ボカロ「歌ってみた」がつなぐ、日本と中国の新たな才能

2011年07月02日 12時00分更新

文● 四本淑三

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音楽には国境はないと思います

―― ニコニコ動画はいつからご存知でしたか?

花近 3年前には知っていました。ちょうどボーカロイドが流行になって。私の友人にもボーカロイドの曲を聴いた人が何人もいて、友人たちにボーカロイドの曲を勧められて、自分も曲を聴いたり動画を見たりしていました。

―― ボーカロイドの声は機械的で違和感があるという意見もありますけど、花近さんはどう感じましたか?

花近 初めて聴いたときは違和感がすごく強かった。最初、ミクの声は苦手だったんですけど、その次に鏡音(リン・レン)が出て、“物語音楽”というのが出て、すごく感動して。それで声も受け入れてきました。

―― 物語音楽というのはどんな?

花近 悪ノPですね。鏡音の有名な「悪ノ」シリーズとか。すごく感動して、それでキャラクターも好きになりました。



悪ノP : ストーリー性を持った音楽で知られる。曲を“原作”としてノベライズ作品「悪ノ娘 黄のクロアテュール」が刊行されている。現在、「月刊コミックラッシュ」(ジャイブ)で漫画版が連載中

―― 日本人には発音の微妙なところや滑舌の悪さに違和感を持つ人も多いんですが、花近さんの場合、それはないわけですよね?

花近 はい。日本語の発音は詳しくないし、“調教”も余り気にしないです。

―― それでご自身も投稿することになるんですけど、歌は以前からやられていたんですか?

花近 私はもともと合唱団で合唱をやっていましたから、歌うのは好きでした。そして他のブログで「歌ってみた」の動画を観てすごく驚きました。素人なのにこんなに完成度の高い歌ができるなんてすごいなと。

―― 投稿するのは怖くありませんでしか?

花近 怖かったですね。初めてのことだったし、「動画をどう投稿しますか?」さえ結構……。そのとき、日本語もあまり読めなくて、すごく大変でした。自分もガイジンだし、発音があまり良くないし、日本人にどんな風に歌が聴こえるのか、すごく緊張しました。

ニコニコ動画のページ(マイリスト)でも中国人であることはしっかり書いてある

―― そこは全然オーケーです。私には発音が柔らかくて、アンニュイな感じに聴こえます。日本人のいう“アンニュイ”のニュアンス分かりますか?

花近 ありがとうございます。分かります。

―― 少し聞きにくい質問なんですが、日本と中国はそんなに仲の良い国ではありません。いまだに中国人だという理由だけでネットではDISられる(悪口を言われる)こともある。それは怖くありませんでしたか?

花近 それはやっぱり、悲しいですね。

―― 怖くはなかった?

花近 怖くはなかった。悲しいです。私は日本の文化とか、音楽が好きで、みんなと仲良くなりたいなと思っていて。もちろん政治的にいろいろ問題がありますけど、せめて国民同士は。私はもっとみんなと仲良くなりたい。せっかく同じ興味を持っているんだし。それに音楽には国境はないと思います。

母国語で「歌ってみた」

(次ページに続く)

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