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ネットワークが“コンテクスト”を理解する

アルバのMOVEは企業のモビリティを変える?

2011年06月23日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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6月22日、アルバネットワークスは「エンタープライズ・モビリティの革新を加速」するという新アーキテクチャ「MOVE」(Mobile Virtual Enterprise)の概要説明を行なった。同アーキテクチャは米国では3月に発表済みだが、震災の影響で日本での発表は遅れていたもの。

モバイルデバイスの急増

 かつては、企業で使われるモバイルデバイスといえば大半がノートPCで、一部PDAなどがある、という程度の状況だったが、現状は大きく様変わりしている。各種スマートフォンやスレート/タブレット型デバイスを個々の社員がそれぞれ入手し、社内システムへの接続にも利用することを希望している状況だ。一方、従来の企業内ネットワークは接続手段に応じて性質の異なるネットワークが並列的に用意されているような状況で、このネットワーク間をまたいで移動するようなモバイルデバイスを効率よく的確に管理できる体制にはなっていなかった。

既存のネットワークの問題点

 アルバネットワークスの新アーキテクチャ「Aruba MOVE」は、こうした現状を踏まえ、さまざまなモバイルデバイスをネットワーク管理者の関与を最小限にとどめ、セキュリティを維持しつつも自由に社内システムに接続できるようにし、さらにどのような種類のネットワークに接続したとしても一貫したポリシーが適用されるような機能をネットワーク側に持たせる、という発想だ。同社ではAruba MOVEを端的に「モビリティのためのコンテクスト・アウェアなネットワーク」だと説明している。

コンテクスト・アウェアなネットワーク

 なお、ここでいうコンテクストとは、「ユーザー」「デバイス」「ロケーション」「アプリケーション」の4つの情報の組み合わせを指す。このコンテクストをネットワークが自動的に識別し、あらかじめ設定されたコンテクストごとのポリシーを適用することで、ユーザーはモビリティを確保しつつ、企業内ネットワークの機能を自在かつセキュアに利用できるようになる。

サイロ化したネットワークを統合

 説明に登壇した同社のソリューションマーケティング部長のマナヴ・クーラナ氏は、まず今回の発表内容が「新アーキテクチャであるMOVE」「MOVEに基づく新ソリューションとしてのBYOD(Bring Your Own Device)」「MOVEを実現するための新製品8種」の3項目であることを明らかにした。

アルバネットワークス ソリューションマーケティング部長 マナヴ・クーラナ氏

 そして、MOVEについては「ワイヤレス(無線)ネットワーク、ワイヤード(有線)ネットワーク、VPN接続、公衆回線経由の社外からの接続など、接続の形態に応じて用意された複数の性質の異なるネットワークが「サイロ化」している現状を改善し、統合された共通サービス(Unified Common Service)を実現する」と説明している。ここでは、セキュリティ、マネージメント、コンフィギュレーションが統合的に行なえるため、運用管理者の負担も大幅に軽減され、ユーザーがさまざまなモバイルデバイスを持ち込んでも問題なく受け入れられる体制が整うという。

Unified Common Serviceのメリット

 また、こうした統合共通サービスを前提とすれば、ユーザーが個人所有のモバイルデバイスを社内システムを利用する際の端末として利用することも容易になる。同社ではこれをBYODと呼んでいる。ポイントとなるのは前述のコンテクストだ。たとえば、デバイスの種類に応じて接続の可否を判断したり、社内システムに接続した際に利用可能なアプリケーションを制限したりといった柔軟なポリシー設定が可能だ。

“On-Ramps”新製品5種の概要

ソフトウェアの新製品(Amigopod、ArubaOS 6.1、Airwave 7.3)の概要

 新製品としては、「シンアクセスOn-Ramp」と呼ばれるアクセスポイント/アクセススイッチ製品5種と、バックエンドのソフトウェア製品3種が発表された。同社のアーキテクチャでは、アクセスポイント側には高度な制御機能などは実装せず「軽量な(シン)」デバイスとしておき、単なる入り口(ランプは高速道路の入り口などの斜路の意味)として扱い、コンテクストの識別や運用管理ポリシーの設定/適用などのインテリジェンスはバックエンドのソフトウェアで実装する、というアプローチを採っている。このため、大量導入が必要なアクセス・ハードウェアは安価に提供し、かつ運用管理ポリシーがアクセス・ハードウェアごとに分散してしまうのを避けて一元管理できるように配慮されている。

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