特許申請中? の第五世代フクロウFAN
まずは開発者が“史上ナンバー1”を自負する冷却設計から。ThinkPad史上最薄の筺体でありながら、消費電力35Wの標準電圧版CPUを搭載する。しかもCore iシリーズに搭載されている自動オーバークロック技術ターボ・ブーストを効果的に活用するため、よりゆとりのある冷却性能を追究したという。
当たり前の話だが、効果的な冷却をおこなうために、CPUクーラー(ファン)の羽根は大きければ大きいほうがよく、回転速度は速ければ速いほどいい。また、風の通り道を確保し、放熱するために筺体のサイズにも余裕があることが望ましい。しかし、マシンが小型になればなるほど、これらの条件を満たすことは難しくなる。
つまり、携帯性の高さ=冷却機構の小型化(薄型化)が要求されるが、同等の冷却性能を得るためには、小さくなっても風量が損なわれず、高速に回しても耳障りにならない高性能なファンの開発が必須だ。これにはさまざまな工夫が必要になるが、ThinkPad X1では単に音が小さいというだけでなく、騒音の質にも配慮した(周波数成分を分析し、より心地よい音を追究した)ファンを新規に起こした。
まず第五世代フクロウFANと呼ばれるファンの形状から。羽根の突起やスリッド間隔・取り付け角度、ホイールオフセット(軸と取り付け面の距離)、円盤の直径、シュラウドの厚み、回転部に占める羽根の割合、ファンの高さなど、様々な要因がファンの風量に影響する。これにはシミュレーションを駆使し、最適解を求めた。
詳細に関しては特許などの絡みがあり解説できないとこのことだが、第四世代との比較では、体積当たりの風量で30~40%の改善が得られているという。FANブレードの厚み(高さ)はTシリーズのものと比較して1/2だが、性能に関しては同じか若干低い程度に抑えられているという。
またヒートパイプの熱抵抗も従来より高性能。チップの接触面の平面度(より密着したほうがいい)、設置場所(風の通り道に冷却すべき部分がきちんと配置されているよう、基板レイアウトなども細かく吟味して、システム全体の冷却性能を上げている。風の通り道を作るため、本体底面に細かなスリッドも設けている。
結果としてThinkPad X1では、既存のThinkPadの冷却機構(Tシリーズ)に比べて約2倍高効率、全体としてみてもTシリーズと同じかわずかに劣る程度の冷却性能を得たという。
熱設計を担当したレノボ・ジャパンの上村拓郎氏は「ThinkPadの温度と騒音規定は業界一厳しい」と自信を見せるが、その厳しい基準をクリアするための試行錯誤がThinkPad X1の開発に不可欠だった。