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鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第36回

「Made in Japan」にこだわるスピーカーが進化!

密閉型の良さを実感!! クリプトン「KX-3PII」

2011年06月21日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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密閉型スピーカーならではの
歪み感が少なく、解像度の高い低音再現

 今や中~小型サイズのスピーカーは、ほとんどがエンクロージャーに穴が空いた「バスレフ」方式となっており、密閉型スピーカーはあまり見かけなくなってしまった。これは、スピーカーの用途が、映画館のような量感たっぷりの音を再現するホームシアターで使われることが増えてきているのにも関係がある。

 バスレフ型とは、スピーカーの低音再生能力を高めるための手法で、簡単に言えばボール紙などを丸めて息を吹き込むと「ボーボー」と低い音が強まった音になるのと同じ仕組み。穴の大きさとポートの長さを最適に設計することで、強調する帯域の周波数を制御することができ、これがバスレフ型スピーカーの低音の能力を左右する。

 バスレフ型は低音再生能力が高いと思われがちだが、特定の低音域を強調するものなので、スピーカーの設計にもよるが最低音域が伸びているわけではない。対して、密閉型はあくまでも振動板が空気を動かすことで低音域を再現するため、量感は少なめだが歪みが少なく、解像度の高い低音再生が可能になる。ティンパニの重量感のある打音や、コントラバスの深い響きなどを明瞭に再現できるという。

KX-3PIIの周波数特性や歪み率、インピーダンスを測定したグラフ。歪み率は1KHzで-60dBと、アンプ並みの歪みの少なさを実現。100Hz前後の低域でも-40dBを確保している。周波数特性もカタログ上では35kHzとなっているが、グラフを見ると40kHz近くまで伸びていることがわかる

KX-3PIIの周波数特性や歪み率、インピーダンスを測定したグラフ。歪み率は1KHzで-60dBと、アンプ並みの歪みの少なさを実現。100Hz前後の低域でも-40dBを確保している。周波数特性もカタログ上では35kHzとなっているが、グラフを見ると40kHz近くまで伸びていることがわかる

 このことから、クリプトンは音楽再生のためのスピーカーとして密閉型を採用している。これに加え、KX-3PIIでは、低域から高域までの周波数特性も拡大し、大幅にその実力を高めており、ハイサンプリング音源を中心としたこれからの音楽鑑賞スタイルに対応できるモデルとなっている。

 筆者が気になったのは、サイズがKX-5と同じ大きさになってしまったこと。個人的には英国の伝統的モニタースピーカーである「LS3/5A」のような、コンパクトなサイズの密閉型スピーカーが大好きなためだ。

 しかし、小さなエンクロージャーや小口径のウーファーで密閉型スピーカーを作ると、能率が低くなり質の良いアンプでないと鳴らしにくいなど、設計が難しくなる。そのあたりを考えると、87dB/W/mと実用上十分な出力音圧レベルとし、再生帯域も40Hz~35kHzとワイドレンジを実現できる本機のサイズがちょうどバランスの良い大きさなのだろう。

濃厚な音の厚みに魅了される! 雄大さを感じさせるスケール感も十分

試聴スタジオで音を聞いてみた

試聴スタジオで音を聞いてみた

 今回、クリプトンの「KRIPTON LABO」スタジオで音を聴かせていただいた。第一印象は、音が分厚くエネルギー感たっぷりの音楽となっていたこと。ノラ・ジョーンズをSACDで聴くと、アコースティックギターの低音弦の響きやボディの鳴りまでも明瞭に再現された。ボーカルはニュアンスがみずみずしく、高域の伸びもスムーズだ。

 ジャズの「A列車で行こう」では、各楽器の音色が実体感を伴ってスピーカーの間に現われる。中低音域がみっちりと充実した音は実に濃密で、スピーカーの音というよりも、音楽そのものに触れている実感がある。

 これだけ音に厚みがあるにも関わらず、音像が大きくぼやけたりすることはなく、クリアで解像感も優れている。これは密閉型ならではのウーファーの低歪みや解像度の高さによるものだろう。

 最後に聴いたクラッシックのモーツァルトのアダージョでは、ブックシェルフ型とは思えない、スケール感の豊かな雄大なステージ感に驚かされた。参考のため、同じ曲をKX-3Pでも聴かせてもらったが、全体のバランスはよくまとまっているものの、低域はわずかに軽くなり、高域は少々華やかでテンションの高い音調に感じた。そして、ステージ感はどうしても小さめになり、ブックシェルフ型のコンパクトな印象になる。

 大型スピーカーと肩を並べると言うと大げさになるが、KX-3PIIは一般的な室内ならばスピーカーのサイズからは想像できない雄大なサウンドを聴かせてくれるだろう。それでいて、同様のサイズである上位機のKX-5の定価47万2500円(ペア)と比べ、およそ10万円安価な37万8000円(ペア)という価格なのだから、コストパフォーマンスはかなり優秀だ。

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