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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ

WWDCで加速する“怪獣大戦争”のゆくえ

2011年06月11日 09時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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GoogleとAppleが提供する垂直統合

 ここ十数年のコンピュータ業界の地殻変動といえば、インターネット(The Internet)とそれに関わる技術へのシフトがある。企業も足元のネットワークから順番にオープン化が進み、SalesForce.comのようなウェブベースでのソフトウェアの提供や、クラウドコンピューティングが最大の注目事項となっている。

 個人利用でも、Yahoo!メールやGmailのようなウェブメールを使うことはごく当たり前になっており、Flickrのような写真共有サイトや、Evernoteのような優れたウェブサービスが重宝されている。図1は、アスキー総研のデジタルとコンテンツに関する1万人調査『MCS 2011』で、「Webアプリ系サイトの利用状況」(2010年4~11月に利用したもの)を聞いたものだ。

Webアプリの利用率

図1:Webアプリ系サービスの利用率(アスキー総研「MCS 2011」で集計)。Yahoo!メールやGoogleマップ、YouTubeの利用率は50%前後。つまり、ネットユーザーの約半数が利用している

 Yahoo!メールやGoogleマップ、YouTubeなどは、約50%の人たちが利用している。ネットの世界で50%の人が使うサービスは、これまで検索エンジンやポータルサイト以外にはなかった。そういったWebアプリの利用傾向は、今後ますますはっきりしていくことは間違いない。これらを可能にしている背景には、JavaScriptとAjax、CSSといった技術が定着してきたということがある。

 Adobeが飛ばし気味に世に問うたAIRとは少し趣は異なるが、「Webの世界でアプリっぽいことが何でもできそう」になってきているのが、いまなのだ。タブレット端末での操作を容易にするjQueryなど、この路線を追う道具もいろいろと出てきている。「HTML5」を旗印とする大きな潮流になっているといえる。

 これらの動きが、iPhoneによってもたらされたiOSやAndroidのアプリの世界に、強烈にぶつかり始めている。

 どちらも「コンピュータと通信の合体」に向かっているわけだが、どちらの道に行くのがユーザーやサードパーティにとってハッピーかということが問われているのだ。そして、いまのところHTML5陣営と、iOS/Androidの世界の間には、決定的な基本理念の違いというものが見てとれる。

 アップルとグーグルは、「アプリ」、「ストア」、「コンテンツ配信」、「広告」、「決済」といった要素をひっくるめて、1つのパッケージとして提供するのがコンピュータの動作環境だと定義し直したのだ。今回のWWDC 2011でのアップルの発表は、それをいよいよ印象付ける内容だったといえる。

垂直統合モデル

グーグルとアップルがそれぞれ提供する、垂直統合パッケージ

 要するに、「コンピュータと通信が合体したら何でもできる」ということだ。スマートフォンは、当然ながらコミュニケーションツールであり、ソーシャルメディアとも連携できる。電話や、手紙や、新聞・テレビといった、いわゆるマス4媒体を飲み込んでしまうばかりか、われわれがふだん目にする広告看板や、お店やサイフの機能も取り込んでしまいかねない「魔法のデバイス」と言っても大げさではない。

 アップルとグーグルは、この領域で目下強烈に張りあっている。Webアプリの世界は、これらとどう対抗していくのだろうか? この2社に加えて、AmazonやFacebookなどのプラットフォーマーも交えた“怪獣大戦争”がいま起きている。Webアプリは、そうしたパワーゲームの足下で、静かに、着実に動き始めたほ乳類といった感じだろうか。


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