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【Interop Tokyo 2011】スリーコム買収以降の製品統合も順調に進む

HP Networkingのファブリック戦略を担当者に直撃!

2011年06月10日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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スリーコムや傘下のH3C、TippingPointを統合したヒューレット・パッカードも、Interop Tokyo 2011においてデータセンターのネットワーク戦略を披露した。サーバーやストレージ製品を抱える同社ならではのネットワーク戦略をHP Networkingのマーク・ヒルトン氏に聞いた。

仮想マシンのモビリティやフラット化の実現

 今年のInteropの大きなテーマは、データセンターファブリックであることは間違いない。旧H3CのA-Series、旧ProCurveのE-Seriesなどのスイッチ製品を擁するHPも、競合他社と同じく、仮想マシンのモビリティ、レイヤのフラット化などに取り組んでいる。

米HP Networking Product Line Manager E-series Switching Solutions マーク・ヒルトン氏

 まず仮想マシンのモビリティに関しては、サーバーやストレージ製品を抱えるだけに一番必要性を感じているようだ。ヒルトン氏は、「(物理マシンを動的に移動させる)VMotionやLive Migrationは、仮想化におけるキラーアプリケーションだ。しかし、今までは複数の階層をまたぐ必要があったため、移動に時間がかかっていた」と振り返る。

 これに対しては、仮想化によるサーバーの集約化を進め、ネットワークの階層をL2でフラット化するのが有効。実現するためにはL2のマルチパスや仮想シャーシなどさまざまな技術があるが、ヒルトン氏は「フラット化するためのアーキテクチャとしてはSPB/PBB(IEEE802.1ah)、TRILL、VPLSなどがあるが、HPはシスコ独自のFabricPath以外は、ほとんどサポートしている。Open FlowもR&Dで取り組んでおり、大学などと共同で実証実験を行なっている」と述べる。

フラット化のための技術はFabricPath以外サポートするという

 そして、実際のデータセンターファブリックの実現においては、旧H3Cのコア技術であるIRF(Intelligent Resilient Framework)が強力な武器となる。IRFは複数のスイッチを汎用ネットワークインターフェイスで相互接続することで、1台のスイッチに見せかける仮想シャーシ技術で、今でいうデータセンターファブリックに近い。「よく独自の技術かと聞かれるが、構成されたシャーシは外部からはオープンなプロトコルでつなげると答えている」とのこと。仮想シャーシに対して外部スイッチからリンクアグリーゲーションで接続した場合、障害時も高速に収束するという。IRFを用いることで、3階層のネットワークをサーバーとスイッチというシンプルな2階層にし、仮想化設定や管理を容易にしているのが、HPの提案だ。

ボックス型スイッチでシャーシ型のような堅牢性、拡張性を実現するIRF

 もちろん、単なる仮想シャーシ技術だけであれば、データセンターファブリックは名乗れない。「VMotionでマシンが移動する場合、仮想と物理でNICやLAN、ポートグループなどを設定しなおさなければならない。あるプロバイダーはマシンとネットワークのプロビジョニングに6週間かかっていた」(ヒルトン氏)という課題がある。これに対して、HPでは仮想マシンが移動した際に設定やポリシーも追従できるよう、モビリティを実現するソリューションを用意している。IMC(Intelligent Management Center)というツールを用いて、仮想・物理のトポロジを見える化し、仮想マシンのネットワークプロビジョニングが容易に行なえるという。「ある顧客のように30ものポータルを使う必要はない。仮想サーバーはvCenter、ネットワークはIMCを導入すれば済む」と、シンプルな管理をアピールする。

ネットワークはIMC、仮想マシンはvCenterで一元管理すればよい

 同じサーバーに複数存在する仮想マシンのセキュリティ管理にも配慮されている。たとえばセキュリティに配慮した方がよいトラフィックのみ外部のTippingPoint IPSと連携し、攻撃を遮断するといったポリシーも設定できるという。

LANとSANの統合
そして電力消費の削減

 データセンターネットワークにおいては、LANとSANの統合も大きなテーマだ。これに関しては、ご存じFCoEやロスレスEthernet(CEE:Converged Enhanced Ethernet)にいち早く対応している。10GbEやFCoEをサポートした「A5820」のようなトップオブラック(ToR)スイッチを投入したほか、サーバーのI/Oを仮想化するバーチャルコネクト、FCoEとEthernetを統合したCNAなどの製品群で、EthernetとFCの垣根を取り払う。こうしたサーバーやストレージ、ネットワークとの統合は、「Converged Infrastructure」を掲げる同社の十八番といえる。

「Converged Infrastracture」を実現するToRスイッチやバーチャルコネクト

 高速な40GbEの対応については、「ハイエンドのA-Series 12500などは40/100GbEのバックプレーンのキャパシティを持っている。具体的なロードマップを明示している訳ではないが、まずはサーバーなどと歩調を合わせ40GbEの製品が出てくるだろう」(ヒルトン氏)と述べる。

 国内で関心の高い電力消費に関しても積極的だ。「E-Seriesのモジュラー型製品では、前バージョンに比べ40%も消費電力を削減した。これは(消費電力の低い)ASICの恩恵だ。また、Energy Efficient Ethernetに関しても積極的に取り組んできた。今後は対応のエンドポイントデバイスも登場してくる」という。このようにエンドポイントのPCのほか、ラックやUPSまでスイッチと連携し、消費電力を削減するというのも、PCやファシリティの製品を持つHPならではのポイントだ。

消費電力を意識したモダンなハードウェア設計を採用する

 さて、スリーコムとの合併からすでに1年半以上が経つが、製品ポートフォリオの整理は着々と進んでいるという。「まずは管理の部分はIMCで統合した。また、「スリーコム」のブランドを終息させることも決定している。現状、A-Seriesはデータセンター、E-SeriesはエンタープライスやSMBをターゲットとした開発を行なっているが、今後は両社の開発部隊がジョイントしたロードマップを提供する予定で、明確な違いはなくなっていくはずだ」と説明した。専業のネットワーク機器ベンダーと異なった強みをどこまでユーザーにアピールできるか、日本での展開が期待される。

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