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SP1までわかる!Windows Server 2008 R2入門 第4回

サービス管理の問題も解消

カーネル改良で省電力を追求したWindows Server 2008 R2

2011年06月08日 06時00分更新

文● 横山哲也/グローバルナレッジネットワーク

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省電力機能が大幅に強化

 Windows Server 2008 R2には、「コア保留(コアパーキング)」と呼ばれる機能が内蔵されている。これはCPUコアを平等に使うのではなく、コアを集中して使うCPUスケジューリング手法である。

 使用されないコアは、「保留」状態となるため電力消費量が減る。保留状態と実行状態の遷移は短時間で完了するため、性能低下はない。実際に確認すると、かなりこまめに切り替えているようである(画面3)。またCPUが保留されていない場合でも、ACPIで定義されたCPUパフォーマンスの状態(Pステート)を調整することで、消費電力を抑えている。

画面3 コアパーキングの状態

 省電力の関連としては、タイマー割り込みの処理も改善された。従来は、CPUがタイマー割り込みを受けたら、それをほかのすべてのCPUに伝達(ディストリビューション)していた。しかしWindows Server 2008 R2/Windows 7では、タイマー割り込みが発生してもスリープ状態の論理コアには割り込みを伝達しない(図1)。これを「インテリジェントタイマーチックディストリビューション(Intelligent Timer Tick Distribution)」と呼ぶ。

図1 インテリジェントタイマーチックディストリビューション

 「チック」は、タイマーのカウントを意味する。「チックタック(Tick-Tock)」の「チック」である。この機能は、消費電力を減らすのがおもな目的だ。タイマー割り込みの多くはそれほど大きな負荷がかからないため、単一のCPUで十分対処できる。もし負荷が高くなれば、スリープ状態のCPUを復帰させ、必要な処理を分担するため性能上の問題はない。また、タイマー以外の割り込みはスリープ状態であっても、すべての論理コアに割り当てられる。

 電源管理は、大規模なデータセンターにとって重要な問題だ。ある都市型データセンターでは、1カ月の電気代が1千万円を超えるという。電力の節約は、環境問題というより経営問題となっている。CPUは電力を多く消費する部品の1つだが、多くのサーバーでCPU利用率は10%程度である。

 そのため、マルチコアCPUでは無駄なCPUコアを停止すれば性能を落とさずに消費電力を下げられる。保留されたCPUは瞬時に復帰できるので、ピーク時の性能が落ちることもない。マルチコアCPUとWindows Server 2008 R2の組み合わせは、ピーク性能を維持したまま平均電力消費を抑える優れたソリューションを提供するはずだ。

フットプリントの削減

 OSが消費するメモリ量やディスクサイズを、「フットプリント(Footprint、足跡)」と呼ぶ。OSが消費するメモリが削減されれば、そのぶんだけアプリケーションが多くのメモリを利用できる。Windows Serverは、初期バージョンから一貫して性能が向上し続けているが、物理メモリなどのリソース消費量は増大する一方だった。

 だが、Windows Server 2008 R2では消費リソースの削減にも注意が払われた。その結果、Windows Server 2008はもちろん、Windows Server 2003と比べてもメモリ消費量が大幅に削減されている。

 たとえば、デスクトップウィンドウマネージャー(DWM)のメモリ消費量は約50%になった。これは、高解像度モニターを使う場合に特に効果的であるという。ディスプレイドライバーのメモリ消費も大幅に削減されている。ただし、こちらはWindows Server 2008 R2/Windows 7対応のドライバーを使った場合のみなので注意したい。

 さらに、Windows Server 2008 R2と同じカーネルを使うWindows 7では、メモリ消費のチューニングが細かく行なわれ、300以上のシナリオをベースに測定とチューニングが繰り返されたという。

 一方、ディスク消費量に関しては、Windows Server 2003に比べて大幅に増加している。単にインストールするだけで、7GB近くを消費してしまう。これは、インストール時に全コンポーネントを組み込むためである。個々のプログラムのファイルサイズは縮小しているとのことだが、実際にWindows Server 2008と比較してみたところ、それほど差はないか微増しているようだった。

筆者紹介:横山哲也

グローバルナレッジネットワーク株式会社
マイクロソフト認定トレーナ/マイクロソフトMVP
1994年からSEおよびプログラマー向けにWindowsのサーバーの教育を担当。1996年、グローバルナレッジネットワーク設立とともに同社に移籍。2003年より「マイクロソフトMVP(Directory Services)」


 本記事は、月刊アスキードットテクノロジーズ2009年12月号の特集2「Windows Server 2008 R2の強化点」を再編集し、Service Pack 1に関する情報を追加したものです。

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