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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第95回

ネットの「熱さ」、現代アートに――藤城嘘とカオス*ラウンジ

2011年06月09日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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アートと同人誌の境界線はどこに


―― 「編集」について掘り下げさせてください。創作にも、作者の内面から作り上げる「0から1の創造」と、DJのように既存の素材に新たな視点を加える「1を2以上にする創造」があると思います。藤城さんは、後者に重きを置いていると捉えていいですか?

藤城 そうですね。たぶんですけど、「個人が素材をドンドン編集して表現する時代」に移り変わっている気がするんです。「0から1」という視点は、美術の歴史をたどっても、やり尽くされている部分もありますし。

 僕自身もいい作品を観たい、集めたいというコレクション欲が強くて、毎日Tumblrで画像を集めたりしています。そのなかでもすごい素材、僕は「高次元のビジュアル」と呼んでいるんですけど(笑)、ただ綺麗だったり印象的なだけでなく、複雑な意味が込められていて、簡単には理解しきれない素材から、さらに要素を抜き出したりイメージを引用したりして、ドンドンドンドン組み合わせていき、結果として作品が生み出されてくることに楽しさを覚えてるんですよね。

 たとえば殺伐とした街の風景写真があったとして、「この退廃的な印象をそのままに、そこから圧倒的に巨大な美少女のイラストが現われたらどうなるだろう」とか。


―― そうしたコラージュ的な作品だと「引用」は不可欠だと思いますが、元ネタに頼りきりの作品だと、同人誌と同じになってしまいますよね。アートと二次創作の境界はどこにあると思います?

藤城 以前、アニメ「らき☆すた」のキャラクター「つかさ」をテーマに企画をやったことがあったんです。段ボールや傘やゴミを使ったり、絵の具を使ってむちゃくちゃグロテスクな何かを生み出したり、激しい解釈の集まりみたいな作品になりました。

 結果できた作品って、つかさを表わす「黄色いリボン」を中心として、自分なりのキャラクター像として表に出すことだったんです。みんな、つかさを“踏み台”にして、自己表現を追求した。そして、それぞれの作品を通して、企画全体で「(キャラクターがいなくても)黄色いリボンという記号だけで二次創作が成り立つ」ということが表に出せたんじゃないかなと。

 そういう風に、作り手が表現したいものを表現する、手段として記号を生かしてるなら、それが新しいアートを生む可能性になるんじゃないかなと思っています。

POST POPPERS時代から「GEISAI」など展示会やイベントを多数企画してきた


―― あともうひとつ。参照と著作権というのは様々なところで議論されていますが、創作に使う素材の権利的な部分の解釈を教えてください。

藤城 うーん……。法律的な部分ではまだまだ勉強中の身ではありますが、問題が起きたら必ず向き合う必要はあると思います。引用したときに、単なるパクリと見られてしまうのか、別の価値に転換されているかの決着というのは、裁判にまで発展したときに決まるしかないところだとも思います。

 コラージュというものは元素材が存在して、そこには権利が発生しうるのですが、作品としてのビジュアル面の計算や時間をかけて処理を施した作品について、「素材はそのままの二次利用なんだから創作性は一切認められない」という短絡的な意見は残念に思います。アートを盾にする気はないですが、問題に真摯に向き合って生涯をかけて研究していくのが趣味ではない、職業としてのアーティストだと思うので、理解しない前提で切り捨てられるのはショックです。


―― その是非はおいて、構成する一部の材料の問題から全体が否定されるのはつらいですよね。

藤城 だからこそ、できる限り意図を調べて、できた作品で納得してもらえるように頑張るしかないかなと思います。

 なので、感情的なところでいえば、自分の作品で参照させてもらう際、「どれだけ誠実に素材を扱えているか」という部分は重要だと思います。ただパッと見が面白いから乱暴に持ってきたりせず、素材の作者が作品にどういう意図を込めたのかしっかり踏まえた上で参照するのが、多くの人に納得してもらえる形なのかなと。

 ただ、乱暴に素材を参照していくことで生み出せる面白みも確かにあって……。うーん……現実社会との調整をするのって、本当に難しいんですよ。

(次ページに続く)

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