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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第104回

Mobile RAMからWideIOへ モバイル向けメモリーの進化

2011年06月06日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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本命LPDDRは2006年に規格化

 こうした特長を持つ第1世代のMobile RAMは、JEDECで標準化されない独自規格のものであったが、これと並行してJEDECでも、低消費電力型SDRAMの標準化作業が進められていた。それは2006年5月に、「LPDDR SDRAM」(Low Power Double Data Rate)として標準化される。

 Mobile RAMの省電力特性を機器メーカーは評価したものの、SDRAM同様の133~166MHz程度という信号レートでは、機能増加にともない高まる広帯域への要求に対応しきれないと判断されたのだろう。標準化されたLPDDRは、DDR-SDRAMをベースとする規格になっていた。

 LPDDRの当初は「LPDDR-200」と「LPDDR-266」が規格化され、その後「LPDDR-333」が追加された。電源/信号電圧は1.8Vまで下げられている。Mobile RAMで説明したPASR/TCSR/DPD/DSといった機能も継承されており、またパッケージもMobile RAMと同じく60-ball/90-ballのFBGAである。もっとも、これはLPDDR向けにJEDECに提案されていたパッケージをMobile RAMが先取りしたというか、LPDDRに先行して実装したような経緯なので、当然同じものである。

 このLPDDRに続いて登場したのが「LPDDR2」であるが、紛らわしいことにDDRとDDR2、さらにフラッシュメモリーまでが混在した規格となっている。LPDDR2には以下の3種類が定義されている。

  • LPDDR2-S2:DDRと同様の、2セルごとに同時アクセスする構造
  • LPDDR2-S4:DDR2と同様の、4セルごとに同時アクセスする構造
  • LPDDR2-N:フラッシュメモリー

 この3種類が定義されたのは機器メーカーへの配慮で、同一のインターフェースやパッケージで、これらのメモリーをまとめてアクセスできるメリットがあるためだ。もっとも、同一といっても完全に同じわけではなく、たとえばLPDDR2-Nは当然ながらリフレッシュができない(そもそも不要)。同様に、メモリーチップの容量もLPDDR2-S2/S4は8Gbitまでとなっているのに対して、LPDDR2-Nは64Gbitまで定義されているなど、細かいところではいろいろと差異はある。

 プロトコルの大部分は共通で、その意味でもシームレスな移行が可能という観点では、共通化したことの意義は大きい。ちなみにLPDDR2では、DRAMセルの電圧は1.8V/1.35V/1.2V、信号電圧は1.2Vに引き下げられたほか、PASRの機能が強化されて、よりきめ細かな制御が可能となっている。

Mobile RAM~LPDDR3の主な仕様
バス幅 信号速度 容量 動作電圧
Mobile RAM 4/8/16bit 133/166Mbps 64M~512Mbit 2.5:1.8V
LPDDR SDRAM 8/16/32bit 200/266/333Mbps 64M~2Gbit 1.8V:1.8V
LPDDR2 SDRAM 8/16/32bit 200~1066Mbps 64M~8Gbit 1.8/1.35/1.2V:1.2V
LPDDR3 SDRAM 8/16/32bit 1066~3200Mbps 64M~8Gbit 1.35/1.2V:1.2V

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