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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第104回

Mobile RAMからWideIOへ モバイル向けメモリーの進化

2011年06月06日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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Mobile RAM 5つの特徴

 こうしたSDRAMの省電力機構は、そのままMobile RAMにも引き継がれた。そのうえMobile RAMではさらに、以下のような特徴を持つ。

PASR(Partial Array Self Refresh)
 通常SDRAMでは、内部のDRAMセル全体に対してリフレッシュ動作をかける。ところが、どんな機器でも「メモリーを常に100%使い切っている」ケースは珍しく、したがって1つのSDRAMチップの中に、「データを保持しているDRAMセル」と「データを保持していないDRAMセル」が混在する。

 データを保持していないセルにリフレッシュ動作をかけても電力の無駄である。そこで「どの領域をリフレッシュするか」を細かく指定できるようにしたのがPASRである。

TCSR(Temperature Compensated Self Refresh)
 日本語では「温度補償型セルフリフレッシュ」。DRAMセルのリフレッシュ間隔は、通常では最悪値にあわせて定められている。だが実際は、温度が高いほど早く揮発する一方で、温度が下がると揮発までの時間はやや延びる。そこでDRAMチップ上にOTCS(On Chip Temperature Sensor)を搭載して、温度にあわせてリフレッシュ間隔を調整するようにしたのがTCSRである。

 メモリーアクセスが激しい場合、DRAMチップ自体の温度も上がりがちなので、リフレッシュ間隔はやや短めにする必要がある。一方でアクセスが激しくない場合は(PASRの効果などもあって)それほどチップの温度が上がらないから、若干であってもリフレッシュ間隔を伸ばすことが可能になる。これがさらに、トータルでの消費電力削減と発熱削減につながり、さらにリフレッシュ間隔を伸ばせるというわけだ。

DPD(Deep Power Down)
 CPUの省電力モード「Deep Sleep」と似た機能。通常のSDRAMチップの場合、待機状態における消費電力はmAオーダーだが、これをμAオーダーまで引き下げるものである。

DS(scalable Drive Strength)
 信号電圧を後から調整できる機能。SDRAMの場合、3.3V±0.3Vというのが仕様で決められた信号電圧であるが、Mobile RAMでは電圧を引き下げる方向に調整可能となっている。

 これにより、例えばメモリーアクセスにともなう信号ノイズの発生量を抑えたり、消費電力を引き下げる効果がある。さすがに、電圧を動的に調整する機能はないので、搭載機器ごとに細かく設定を変えて使われる。

小型パッケージ
 携帯機器内に実装したり、あるいはほかのチップと積層するためにワンパッケージ化したいといったニーズには、標準的なSDRAMチップのパッケージは大きすぎる。そのため「60-ball」ないし「90-ball」の「FBGA」(Fine pitch Ball Grid Array)をパッケージに採用する。

 言うまでもないことだが、Mobile RAMは携帯機器向けということもあって、2つのチップを1本のバスに接続するよりも、倍の容量のチップを1つ接続するほうが、実装面積/体積の節約になる。ましてやDIMMを使うケースなど考えなくていいので、必然的にメモリーチップとコントローラー間の接続方法は、GDDRに近いものになっている。

 どうしても複数個でないと用途に合わないという場合は、バス幅を調整して対応する。おおむねMobile RAMの世代では、バス幅が4bit/8bit/16bit幅の3品種がラインナップされた。

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