携帯電話によるインターネットは
“なんちゃってインターネット”
続いて登壇したのはKDDI 代表取締役社長の田中孝司氏である。通信各社の合併によって生まれた新生KDDIは2001年にスタートし、今年の4月でちょうど10年になる。そこでまずはこの10年の同社の歩みについて振り返った。
2000年度に2兆8000億円だったKDDIの売上は、2010年度には3兆4000億円にまで伸びている。注目すべきはそれに占める携帯の割合で、62%から75%にまで至った点だ。携帯電話事業がKDDIの業績を牽引していることがよくわかる。
その携帯電話事業でキーとなったのが、3Gとパケット定額のスタートであるとする。データ通信がユーザーに身近になり、新たなサービスが次々と携帯電話にもたらされた。それらのサービスにはFeliCaなど携帯電話発祥のものもあるが、多くはPC向けのインターネットサービスとして誕生したものである。
PC向けに人気のあるインターネットサービスを発掘し、ケータイ向けにカスタマイズする。これがケータイサービスの成功の方程式である。ケータイ向けにカスタマイズが必要だったのは、PCに比べてハードウェアのスペックが低かったからだ。特に「ユーザーインターフェイス」「処理速度」「ネットワークの速度」の3点で課題を抱えてきた。それはつまり、性能が制限されたデバイスの中でインターネットの価値を取り込む“なんちゃってインターネットの時代”だったと、この10年を総括した。
モバイルデバイスの制約が解かれたことで
PCとモバイルのインターネットがシームレス化する
しかし、この制約はスマートフォンでは解消されつつある。まずインターフェースはタッチパネルでPCを上回る操作性が実現された。処理速度でも今や1GHz超で動作するCPUが搭載されている。ネットワークでも、今ではauの3G通信では下り最大9.2Mbps、WiMAXでは下り最大40Mbpsの速度を実現している。
こうして3つの大きな課題がクリアされたことで「PCインターネットでできることはモバイルで完全にできるようになる」と断言。そして、次のインターネット時代におけるKDDIの戦略は「マルチデバイス」「マルチユース」「マルチネットワーク」の“3M戦略”である。
マルチデバイスでは、スマートフォンはもちろんタブレットや電子書籍、またデータ通信など多様な機器に通信機能が搭載されていく。一方で、従来のケータイからスマートフォンへの機種変更があると、1契約あたりのデータ量が10~20倍になるという爆発的なデータ量の増大も発生する。そこで必要なのがマルチネットワークだ。
KDDIでは2010年から2015年にかけてのスマートフォンによるデータトラフィック量は約18倍になると推定している。2013年には現状の周波数で収容可能なデータ量を上回り、2015年には1/3しか満たせないとする。すでに発表している無線LANやLTEといった次世代技術への投資。さらにFTTHやCATVといった同社が抱える有線ネットワークの活用も進めていく。
マルチユースについては「LISMO」に代表されるキャリア側が企画・運用するコンテンツとともに、インターネットから生まれたオープンコンテンツを活用する。ここでも携帯電話時代のような“ケータイに取り込む”という発想ではなく、PCとモバイル間でシームレスに利用できることが重要になってくると語られた。
イー・モバイルは今年度中に5機種のスマホとタブレット
UQは2012年度中にWiMAX 2をスタート
データ通信を中心に事業を展開するイー・モバイル、UQ WiMAXの両社はともに好調をアピールした。
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