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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第94回

諸君!革命的美人ブロガー安全ちゃんに刮目せよ!

2011年05月25日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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「世の中の常識は願望ありきなんだな」と働いて思った

―― 大学や会社に入って、ようやく個性が解放できたという人は多いですね。同調性が高い環境だとなおさら。

安全ちゃん そうですね、大学以降ですよね。ただ私の場合、中学を卒業したあと就職のため上京しているので、田舎の閉塞感的なものからはすぐに解放されたんですけど、田舎時代のライフスタイルが板についてしまっていて、今でもネット関係以外の人には好きな本やネットのことはまったく話さないんですよね。

 幸いなことに、実社会で安全ちゃんだと気づかれることも今のところないですし。顔出ししても、衣装やお化粧などで雰囲気が変わっているし、キャラクターが普段と違うから、たぶんピンと来ても他人のそら似みたいな感じにとらえられると思うんです。ちょっと不安ではありますけど。

思想系や哲学系の書籍を読むようになったのは、上京以降。「もともとサブカルチャー的な文脈で共産圏のカルチャーは好きだったんですけど、そこまでニッチな雑誌は置いていなかったんですよ。思い返せば『世界』はあったかもしれないですが、チェックしていませんでした」という


―― その距離の置き具合が、ブログ記事に発揮されてますよね。ご自分を含めた人間を遠くからじっくり観察して皮肉や自虐を織り交ぜるという。主観と客観がまぜこぜになっていたら、ドライな切れ味は出せないじゃないですか。その視点で中学卒業後に社会に触れたとき、どんな印象を受けました?

安全ちゃん そ、そうなんですかね? 自分ではあまり自覚していないんですよ。

 ただ、社会に出たとき、確かにあまり驚きも失望もない感じでしたね。唯一思ったのは、悪い意味で世の中は適当なんだなということでした。そもそも中学卒業後の16歳くらいの娘を雇ってしまう会社も適当ですし、上司や先輩の言にも自分の感情をまぜこぜにしたいい加減さを感じたりしました。日本の社会はもっとコンプライアンス(法令遵守)が守られていると思ったんですけど……。世の中の常識とされている多くの事柄は、後付けでそれを正当化してくれる理屈をつけているだけなんだな、感情が先に立っているんだなと、働いてから思いましたね。


―― なるほど。ちなみに、実社会で解放していない素の自分みたいなものは、ネットでは出せていますか?

安全ちゃん 素とはちょっと違うかもしれないですけど、自分の趣味嗜好が一番表に出せるところではありますね。2008年~2010年の前半までは、忙しくてブログが全然更新できなかったんですよ。それでやっぱり、沸々と何か言いたくなる気持ちがたまりましたね。


―― 確かに、料理や思想、文学など、趣味嗜好を存分に発揮されていますしね。その中で珍しかったのが、「どうしようもない東京に舞い降りたエンジェル 石原慎太郎(白)」です。普段は達観したスタンスから皮肉や自虐を織り交ぜている印象ですが、あの記事はわりとストレートにメッセージ性を出していると思います。震災後の「こうするべき、こうあるべき」的な風潮への警鐘みたいな意味合いがあったんですか?

安全ちゃん あれは確かに普段と比べて異質かもしれないです。普段は自分の考えみたいなものは、ワンセンテンスの中に混ぜ込んで、サブリミナル効果を狙うみたいなことはしているんですけど(笑)、あの記事はそれがちょっと大きな塊になったかなと。

 でも、震災後の風潮に憤慨してというのはないです。むしろ昔から常に憤慨していますから(笑)。世の中で悲惨な出来事があってもそれに対して冷淡な人は前からいて、そういう人に思うところは日常から持っているんですよ。そのいつもの気持ちを時事的な素材に乗せたら、ああいう感じの記事になったんだと思います。タイムリー性を狙って普段より早く書いたので、そういうところが影響しているのはあるかもしれませんけど。

「どうしようもない東京に舞い降りたエンジェル 石原慎太郎(白)」。石原都知事の風刺を表面に被せて、100万円募金しながら募金という行為を考えさせる構造になっている

(次ページに続く)

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