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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第57回

「普通なら絶対ありえない」バンド、ニコ動とミクから誕生

2011年05月14日 12時00分更新

文● 四本淑三

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当初の目的から言うと想定外

―― 今日は「ナノウ」としてお話を伺おうと思うんですが、バンドの曲とはアプローチを変えてますよね?

ナノウ 歌うのはVOCALOIDで自分じゃないし、自分だったら絶対にこんなの歌わないというのを、あえて作ろうとしたからですね。

ナノウさん

―― でも、それをet nuでは思いっきり歌っちゃってますけど。

ナノウ ははは。そうなんですよ! 当初の目的から言うと、想定外というか。最初のうち、自分で歌うとは全然思っていなくて。自分じゃないからこそできることがあったというか。自分が歌うとなると制限だらけになる、こんなの歌うの絶対イヤだとか。

―― それがなぜまた。

ナノウ 投稿していくうちに、自分の中でだんだんそれが溶けていったんですね。初めて自分が歌って投稿した「文学少年の憂鬱」という曲がありまして、それは自分が歌う、歌わないを考えずに、普段通りに作った曲なんです。で、その曲が殿堂入りしたときに歌ってみたくなったというか、ふと魔が差して。



―― 魔が差した?

ナノウ そうですね。いざ投稿してみたら、反応が良かったのが意外だった。今までバンド活動でライブをしたり、自分のMySpaceを持ったり、自分の楽曲を発表する場所はいくつかあったんですが、今ひとつ反応が分かりづらいところがあって。その点、ニコ動はコメントという形ですぐリアクションが返ってくる。自分が歌ったときにも、そうやって反応が返ってきたのがすごく嬉しかった。でもバンドの活動が第一で、ニコ動の方は単なる遊びでしかなかったんです。それが予想外に色んな人たちに聴いてもらえたり、知り合った人たちとライブをやるようになったりして。

―― それがなければet nuも生まれていなかったわけですよね。et nu結成の前に、ドキ生には「貴族院」で出演していますよね?

ナノウ あの後に(ドキ生主催の)アカサコフさんから、「次はボーカルとしてバンドで出ないか」というお誘いを受けたんですね。それがなければet nuはなかったと思います。でも、僕にはニコ動まわりの知り合いはほとんどいなくて、その中の数少ない一人、いまet nuでキーボードを弾いているルシュカに「なんか出ることになったけど」という相談をして、彼女にメンバーを集めてもらったのがあのバンドなんです。

―― バンドで音を出してみてどうでしたか?

ナノウ ドラムのアンパンマンはTreowつながりで知り合いだったんですが、他は初対面で、みんなビビるくらい上手くてひたすら恐縮していましたね。

ドキ生

―― ナノウさんだって上手いじゃないですか。

ナノウ いやー、もうスタジオに入ったときも、(演奏を)やってもらっちゃってすみません、くらいの感じだったんで。安心して任せられるというか。オレは本番はドヤ顔だけしていれば大丈夫だな、みたいな。

―― et nuをパーマネントのバンドにしようという発想は、いつ頃から?

ナノウ ドキ生でライブをやるまでは、多分メンバー全員がその場限りのバンドだと思っていたはずなんです。自分もそうだと思っていました。でも終わった後には「今日はやったね!」みたいな感覚をメンバー全員が感じていた。ライブの最中もすごくコミュニケーション取れてて。で、打ち上げのとき、このバンドでやっていこうという話になって。

―― インディーズとの兼ね合いもありますよね?

ナノウ だから自分も正直に、「インディーズでバンドをやっていて、そっちの方がプライオリティーが高い」という説明はしました。それでもいいのであればと。

―― ニコ動以前から、ずっとバンドやられてきたわけですもんね。

ナノウ 僕の音楽的活動はバンド活動が中心で、ほとんどそれしかなかったんです。高校を卒業して音楽の専門学校に行ったんですけど、それからずっとバンドをやってました。ひたすらライブをやって、その繰り返しで。

―― ネット界隈には興味なかった?

ナノウ マンガやアニメは好きでしたけど。2年くらい前に初音ミクというものがあるとネットの噂を聞いて、ニコニコ動画も見始めたんです。ソフトでボーカルがここまでできるってことが面白くて、自分もソフトを買って。もともとバンドのためにデモ音源を作ることは一人でやってたので。



―― バンド活動とは何が違います?

ナノウ 一人のコンポーザーとして女性が歌う曲を作るということで、自分でボーカルをとってライブをやるバンド活動とはまったく違います。一人でどこまでできるのかなというのをやってみたかったんですね。

(次ページに続く)

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