このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第69回

ようやく発売されたiPad 2は「iPadの完成形」か?

2011年05月12日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

「iPad」のとりあえずの完成形!?
マルチタスク動作ではAndroidが上

iPad 2(右)は初代iPad(左)の完成形のような位置付けにある

お詫びと訂正:掲載当初、写真キャプションの左と右が間違っておりました。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2011年5月12日)

 現在市場にはiPad 2以外にも、さまざまなタブレット端末が登場している。そのほとんどは、本連載でも採り上げた「XOOM」のようなAndroid搭載端末だ。

 さて、それらはiPad 2に迫ることができたのか? 率直に言えば、やはり元祖であるiPadシリーズの完成度は、Android系タブレットより上だ。

 Honeycomb(Android 3.0)はタブレットに向いたユーザーインターフェースになっているので、スマートフォン向けの「Android 2.x」を使ったタブレットよりは良くできていると感じる。だが、まだOSの動作が最適化されておらず、動画再生時にコマ落ちが起きたり、アプリの動作検証の面で不安があるなど、「Androidの事情」をよく理解していないと納得しづらい部分がある。

 他方、マルチタスク動作などについては、やはりiOSよりAndroidの方が「素性がいい」と感じる。筆者が体験した実例でいえば、クラウド上にある電子書籍サービスから書籍をダウンロードする際に、iPad 2では「アプリを開いたままダウンロードが終わるまで待つ」必要がある。だがXOOMなどのAndroid搭載タブレットの場合は、ほかのアプリを使いながらダウンロード終了を待てばいい。また複数冊ダウンロードするなら、1冊目を読みながら次を待てばいい。どちらが自然かと言えば、当然後者だろう。

 それでも、アプリや映像配信などのコンテンツの充実度を考えると、iPad 2に軍配を上げざるをえない。スマートフォン向けのアプリが中心であるAndroidは、タブレット向けとしてはまだまだ未熟だ。

 また、縦に持って使うことを考えると、Androidで採用されている縦横比16:9のディスプレーはちょっと使いづらい。7インチ以下ならばいいが、10インチクラスとなると少々バランスが悪いと感じる。書籍やノートは黄金比に近いものが多い。そうすると4:3のiPadの方がそちらに近く、違和感が薄い。iPad 2も額縁部をもう少し小さくしてくれた方がいいとは感じるが、手で持つことを思えば、あのくらいの枠があるべきという発想なのかもしれない。

 熟成モデルらしい完成度の高さが、iPad 2の良さだ。OS的にもハードウェア的にも、iPad 2は「iPadというコンセプトの、ひとまずの完成形」という印象を受ける。iPhoneでいえば「iPhone 3GS」のような位置付けだろうか。もちろんこの後は、ディスプレーの解像度が上がったり、次世代iOS「5」を基本としたハードウェアへと進化していくのだろう。それが今年出るのか来年出るのかは分からないが。

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)。5月20日には「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)が発売予定。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン