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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第93回

探検コムの「広く浅く」が深すぎる!

2011年05月11日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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子供のころから、
神田と秋葉原に通っていた

―― 探検コムでは、知的好奇心の探求を総じて「探検」と定義されていますが、ご自身が資料探検を始めたのはいつごろからでしょう。

探検コム 子供のころからかな。俺、こう見えてけっこうボンボンで、生まれも育ちも東京の日本橋なんですよ。だから学校の帰りに、よく神田の古書店街を回っていてね。中学の頃にはどの書店にどんな本があるのか分かるようになっていて、バイト代で好きなものが買えるようになった大学生の頃に、1冊200円くらいで買える「芸術新潮」や「月刊太陽」みたいな雑誌を何十年単位でまとめ買いしていました。美術や写真が好きというのが昔からあって、気づいたら探検していた感じかな。

 あと、神田とともに秋葉原の電気街にもよく通っていたから、マイコンやパソコンにも詳しくなっていて、集めた雑誌をデータベースにしようと考えたりしていたな。もう本棚がギシギシだったから、1990年頃にSCSIのスキャナなんかを買ったりして。

探検コム氏。某居酒屋の一室でじっくり語ってくれた。文字どおりの「探検」もしており、学生時代に訪れた国は数多い。「東ドイツや西ドイツ、ユーゴスラビア等があった時代から回っているので、途中でカウントが面倒になっちゃった」とのこと


―― 文理で充実した環境ですね。それが探検コムの画像素材につながったと。

探検コム いやそれがさ、著作権の問題があるでしょ? 集めた雑誌はまだ著作権が切れていなかったから、データベース化したところで使い道がないんだと途中で気づくわけ。だから、著作権が切れたもっと古い時代の写真集みたいなもの……たとえば「満州事変写真集」とか、そういうのを集めるようになって、ようやく自由に使える画像が集まってきたと。サイトの別館に「近代日本・画像アーカイブ」ってあるでしょ。ああいうのが作りたくて、自分のPCに溜めこんでいったんです。実際ホームページやるまでには数年の間が空いたけど、まあ、そういう趣味が下地になっているかな。

「近代日本・画像アーカイブ」コーナー。江戸時代から明治時代の画像や写真を中心に、歴史的な出来事や人物を伝える画像が1000点近く収録されている


―― 1998年のスタート時は「SITE NAMASTE(サイト ナマステ)」というサイト名でしたね。現在とイコールのコンセプトではなかったようですが。

探検コム うん。最初は「こんなに画像持ってるよ」と画像ばかりを紹介しようと思っていたんだけど、当時はGoogleの画像検索もなかったから、それだけじゃ全然検索されないってことにすぐ気づいたんだよね。

 それじゃダメだから、文章を入れて読み物にしようと思って、テキストサイトという言葉もない時代だったけど、テキストと画像で楽しめる風に作っていった感じ。やっぱり、作るからには人に見てもらいたいし、出版社で働いているから「ねえねえ知ってる?」と情報を伝えるのは好きだったんだよね。とにかく画像を載せるのが最優先ではあるんだけど、そこに何かしらの情報を載せていくというふうに意識していたと思います。

 でも、「サイト ナマステ」って名前には意味はなくて、単に探検というテーマから海外の秘境……俺の中ではインドやパキスタン、そのあたりの言葉を入れようとしただけでね。当時27歳だったんだけど、20代って「国際交流」とか格好いいって考えるじゃん。本当はどうでもいいのに(笑)。


―― なるほど(笑)。ちなみに、今のお仕事とサイトで扱われている情報は、ジャンルが共通していますか? それとも意図的に分けています?

探検コム たまたま被ったり、仕事でボツになったネタを載せたりすることもあるけど、サイトのネタは基本的にマイナーな方向にしようと考えていてね。仕事のほうは週刊誌だからメジャーな情報が求められるけど、誌面に載せるネタを個人のサイトに載せるわけにはいかないじゃない?

 たとえば芸能人のネタにしたって、特ダネを省いたら絶対マニアにはかなわないわけですよ。勝てないならやっても意味がない。それに気づいて、ネットではマイナーな分野に行こうとロングテール理論の発想をしていたら、結果的にああいう内容のサイトになったんですよ。

 ただ、俺は広く浅くの人間だから、自分の好みでジャンルが偏っているというのはないんじゃないかな。意識しているのは、画像ありきというところと、記事に「あっ、こういうことだったんだ」みたいな発見を盛り込むこと。ジャンルは問わず、読者に「この面白い話、知ってる?」と語りかけたい気持ちが根本にあるのは間違いないと言えるね。

(次ページに続く)

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