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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第26回

位置情報追跡問題がAndroidにも拡大、Appleは公式回答

2011年05月04日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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Androidで保存されていたデータは小規模
プライバシーの保護とDB活用の両立をどうする?

 一方、Androidの場合は「過去50件の基地局情報と200件の無線LANアクセスポイント情報」と保存されているデータに制限があり、アクセスもiPhoneのように簡単ではないという。Windows Phoneの場合、データは端末上には保存されていないようだ。

 Appleに送信するデータは匿名化/暗号化されており、サードパーティとの共有については、ユーザーがオプトインしたサードパーティ開発者に対しては、匿名のキャッシュログを提供しているという。自社広告システムのiADでは、ターゲティング広告で位置情報を利用できるという。同時にユーザーの許可なしにサードパーティや広告に位置情報を提供することはないと述べている。

 Appleはまた、交通情報も匿名で収集しており、クラウドベースの交通情報データベースを構築中という。数年後にiPhoneユーザーに交通情報サービスを提供したい、とも記している。

 この間、アメリカでは数人の議員、それにプライバシー保護団体などがプライバシー保護の立場で行動を起こしており、Appleに質問状を送ったり、説明のための会合を開くよう求めたり、審問への参加を求めている。またiOSとAndroidにおいては、それぞれのユーザーがこの件に関して訴訟を起こしている。プライバシーに厳しく、GoogleのStreet Viewサービスやその撮影車による無線LANアクセスポイントのデータ収集に厳しい目を向けてきた欧州でも、ドイツ/フランス/イタリアなどの政府が、この件に関する調査を検討しているようだ。今後Research In MotionやNokiaなど他のスマートフォンでも収集が明らかになるかもしれない。

 だが、このようなデータをAppleやキャリアが収集していることは必ずしも有害ではなく、地図やナビゲーションなど位置情報を必要とするサービスを効率よく高速に提供できるし、便利なサービスにつながる場合もある。問題は、ユーザーにわかりやすい形で説明していなかった点だろう。

 実際にAppleは「ユーザーのセキュリティとプライバシーを保護しながら、高速で正確な位置情報を提供することは複雑な技術的問題であり、簡単に伝えることは難しい」「Appleを含む新技術を開発した人々が、これまでこのような問題について十分に伝えなかったこともあり、ユーザーは混乱している」と釈明している。これを機に議論が進み、モバイルでの便利さとプライバシーの境界線がどのように引かれていくのか注目される。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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