訴訟問題でさらなる打撃
DDR3の登場でトドメを刺される
これだけでも十分FB-DIMMの普及には問題があったわけだが、さらに2つの事柄がFB-DIMMのトドメを刺した。ひとつは米Rambusとの特許問題である。FB-DIMMの市場が立ち上がる直前の2005年後半、RambusがFB-DIMM関連ベンダーに対して、「AMBはRambusの持つ特許に引っかかる」と言いはじめたのだ。
この特許は次回説明する「Direct RDRAM」に関係して、同社が取得したものだ。当初はインテルが調停に乗り出したものの失敗。この時点でFB-DIMMはJEDEC標準の規格となっていたのだが、これを使うためにはRambusと個別にライセンス契約を結ぶ必要が生じてしまった。当然ながらライセンス料は製品コストに上乗せされるわけで、そうでなくても高いFB-DIMMがさらに高いものになってしまった。
もうひとつの打撃は、「DDR3」が立ち上がってしまったことだ。元々2003年頃のインテルのロードマップでは、DDR2-800が実現できるかどうかも怪しかったので、この時期からFB-DIMMに全面的に移行するというアイデアだった。
ところが、3年後の2006年では以下のように変わっている。ようするにインテルの目論見は外れ、FB-DIMMとは別にDDR2やDDR3が立ち上がってしまったわけだ。
こうなると、FB-DIMMの持っていた(はずの)高速転送のメリットは消えてしまい、「とにかくメモリーの搭載量を増やせる」ことだけがメリットの独自規格に堕してしまう。それでもこの時点では、「FB-DIMM2」というDDR3世代のFB-DIMMを開発する計画があったものの、その半年後にはこれもロードマップから消えてしまった。
もっとも厳密に言えば、これは「AMBをモジュールに搭載するのをやめた」というだけの話でもある。2010年にインテルは、「Nehalem-EX」と呼ばれた「Xeon 7500」シリーズを発表する。このXeon 7500シリーズは、メモリーバスの先に「SMB」(Scalable Memory Buffer)と呼ばれるチップがあり、その先にRegistered DDR3 DIMMがつながる方式になっている。
ようするに、AMBのDDR3対応版がSMBになったようなもので、構造的にはFB-DIMMに近い。FB-DIMMで問題になった、ディジーチェーンによる長いメモリーアクセス遅延を解消するために、メモリーの接続方法は大幅に変わっている。
次回は、問題の多かった「Direct RDRAM」について解説したい。
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