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KDDI「手のひらAR」はARの限界を突破するか?

2011年05月07日 12時00分更新

文● 近江 忠

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計算するGPUの時代に期待


―― 現行でGPUといえばTegra 2だと思うんですけど、これからのGPUで期待しているものはあります?

加藤 この前のスペインの展示会(Mobile World Congress)でロードマップを見たときは、Tegra 5(仮)です。処理速度が75倍という話もあるので、それは楽しみで仕方ないですね。

 またGPUに計算させるというのも1つの大きな流れですよね。Imagination Technologies社の最新GPU――auは採用していないんですが――は、GPU側に(CPUのように)計算させるというのがあるんですね(GP GPU)。それを使えるようになったら、あっと言わせるようなことができるんじゃないかと思います。ネットのニュースを追っかけている限りでは、可能性を追求したいというのはあります。


―― こういった高性能のものが出ることによってワンランク上がると。

加藤 NVIDIAさんが出している「CUDA」なんかもそうですが、それがモバイルに来たら……というのは期待、可能性としてとても楽しみです。世界がガラッと変わるんじゃないかと。その辺りはまだ各社独自の規格になっているんですが……CUDAはNVIDIAじゃないと使えないとか。それがOpenGLやOpenCLというオープンな規格になってどこまで普及するかで、今後そのやり方がどう成功するかが決まるかと思っています。


―― Open GLやOpenCLの方がやりやすいんですか?

加藤 可搬性ですね。OpenCLならこっちのAndroid端末でも動くよ、というところです。ユーザーの囲い込みって観念で言うと「auの端末でしか動かないよ!」ということもできるんですけど、「どこの端末でも動くよ!」という作り込みも、そちらはそちらでメリットになるかなという感じもします。


―― OpenGLも一言では語れないかわいそうな歴史がありますからね~。で、この手のひらARですけど、PさんたちにはSDKみたいなものをお渡しすることになると思うんですが。

加藤 これはプレイヤーとして出すことになると思うんですよ、個人的には。これはプログラムじゃなくてコンテンツを用意してもらい、それを再生するプレイヤーですよと。SDカードに入れて再生すると踊ってくれるような。そうすると誰でも作れるし、auもオリジナルキャラクターを売るかもしれない。LISMOで音楽を売るのと同時に踊ってくれるキャラクターも100円で売りますよと。たとえばキャラクターの衣装が100円です、とか。


―― アプリとしてリリースされるのはいつなんですか?

加藤 いま説明したのは個人的なアイデアなので、その形のまま出るかはわからないんですけど、6月末ぐらいにはなんらかの形でアプリが世の中に出る予定になっています。


―― そのときには、なんていうか分からないですけど、このキャラクターも出てきます?

加藤 そこもまだ未確定なんです。

手のひらARオリジナルキャラクター


―― 今、ちょっと不安に思ったのですが、このキャラクターで、研究発表とか学会とかに出したりしちゃったわけですか?

加藤 ええ。海外の研究者から「キャラクターがキュートだ!」と言われました。


―― それちょっと、学会の研究者の感想としては間違った方に行ってませんかね、技術を評価しろよ、と(笑)。

加藤 いや「ジャパニメーションだ!」と、オレンジ色の女の子にかなり食いついてもらえまして。世界共通なんだろうなと思いました。


―― 元絵は誰が描かれたんですか?

加藤 これは有名な3Dモデラーの、ISAOさんという方なんですけど。


―― 依頼された方も「えっ」という感じだったんじゃないですか。

加藤 もともとローポリメインの方だったので快諾はしてもらえたんですけど、ARで使うとは言っていなかったので、1年前に作るだけ作ってもらっていたのを再利用したものなんですよ。


―― アプリの登場は新製品、新端末の発表時ですよね。

加藤 間に合えばいいな、という感じです。ちょうど本当に「KDDI研究所としてこういうのができた!」という状況で、本当にオリジナルの技術として出てきてはいるんですけど、どうやって出していくか、どうなるかは本当に決まってないんですよね。なので、そのタイミングで「ああこうなったんだ!」というのはあると思うんですけど。

 私自身も「手のひらがくすぐったい」感じがしたので、そういうのにクリエイターの方たちが「ああ面白いな」と思ってくれて、使ってくれたらいいなと。それが今年中にある形で出せるんじゃないかと。


―― 夢が広がりますね。6月の発表が本当に楽しみです。

加藤 さっき音楽付きで売れるという話もあったんですけど、「auコンテンツフォーラム」に出したものは楽曲に合わせて動き(振り付け)も自動で生成するものだったんです。その方面の研究をしている者もいるんですね。自分の好きなキャラに、うまく踊ってくれるようなものを作ってくれるのもできるんじゃないかと。そうしたら敷居が低くなるんじゃないかと。それもまた意味のあるアプローチじゃないかと。


―― 「Garage Band」みたいなものですよね。それが保存できるようになっているとますますいいと思います。でもそれをオープンにすると絶対いやらしいのを作って手のひらでポールダンスをするやつとか出てきますよ。絶対(笑)

加藤 手をこうしたり(傾けて下から覗こうとする)なんかしてね。下からは見えないようにしてますが。


―― センサーの傾きを調整して「こうすればスカートの中が見えるようになる」とか絶対そういう風に考えてるやついますよ。でもそれくらい自由があった方がいいかな。

加藤 そういうのも、実際ネットに転がってますからね。


―― そこから新たな産業の形とか新たな初音ミクが出てくるんだとしたらいい話ですし、それをつくった親玉ということで「ワシが育てた」という感じになればと思うんですよね。

加藤 なれればいいんですけどね。遅れないようにがんばります!(笑)




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