コミュニケーションを提供できないアニメは儲からない
―― 表現手法、そして優れたストーリーが日本アニメの特色と言えるわけですが、映像そのものの商品価値が低くなっているなか、グッズビジネスに期待が集まっています。この連載でもグッドスマイルカンパニーの安藝社長へのインタビューには大きな反響がありました。
数土 「作品の面白さと、グッズの売れ行きは必ずしも相関しないのが興味深いところです。たとえば北米でグッズ販売が絶好調の『爆丸 バトルブローラーズ』ですが、現地のアメリカ人に聞いても、ストーリーすら把握していない人も多いんです。
現在、ユニバーサルで映画化の企画が進んでいますが、『ストーリーが浸透していないのにどうやって作るの?』と米国のコンテンツ業界の人に聞いたら、『いや、だからこそ自由に作れるから良いんだ』って(笑)」
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―― それはすごい割り切りですね。しかし、“キッズ向けのアニメなのに大人でも楽しめる優れたストーリーと映像表現”がこれまでの国産ヒット作のいわばセオリーであったと思うのですが。
数土 「それは先ほど(前編で)申し上げた、『映像そのものではなく、コミュニケーションを提供できるかどうか』に評価のポイントが移りつつある、という話に通じます。テレビ、DVDそして玩具やフィギュアといったグッズが、個々に存在しているのではなく、“総体としての商品”としてコミュニケーションを提供できていることが肝要です。
もちろん、『作品そのものは大切じゃない』というわけではありません。作品を通じてコミュニケーションが取れるか、ネットで対話が生まれるかが重要で、『爆丸 バトルブローラーズ』の場合は、対戦型の玩具とテレビアニメがシンクロすることでそれを生み出しています。
コミュニケーションにおいて、テレビはビジネスの核、あるいはハブとして機能しています。みんなが毎週同じ時間にテレビの前に集まる。番組を見て(同じタイミングで)何かアクションを起こす、ということが重要なんですね。
ネット配信の弱点もそこにあると思っています。いつでも見られることでコミュニケーションが拡散してしまうんです」
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