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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第98回

メモリーの大容量化を支える技術 Registered DIMM

2011年04月25日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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メモリーの高速化で浮かび上がった
基板の信頼性問題

 反射波に続いて登場した信頼性の問題は、「ガーバー」(Gerber)の問題である。ガーバーとは、コンピューター業界では「基板設計データ」のことを指す。単なる基板の配線図だけではなく個々の材質や、場合によっては製造方法まで含む場合も多い。

 SDRAMの世代までは、メモリーチップベンダーは電子部品規格の標準化団体「JEDEC」に定められた仕様を満たしたチップを出荷して、それをメモリーモジュールベンダーが購入して、別途自社で作るか買ってきたDIMM基板に実装して販売するという形態だった。この当時はまだ、DIMM基板による差異はそれほど多くなかった。タイミングマージンが十分にあるとか、信号自体が遅いか信号の電圧レベルも高いなどにより、ノイズなどの影響に比較的強いということもあった。

 ところがDDR-SDRAMの世代になると、信号がピークで3倍も速くなり(PC133とDDR-400の比較)、基板の回路の良し悪しが信号伝達に大きな影響を及ぼすようになった。またマザーボード上の終端抵抗に加え、DDR-333 DIMM以降ではDIMM側にもチップ抵抗を搭載する必要が出てきた。

「JEDECガーバー準拠」という触れ込みだったPC-2700 DIMM

左写真の拡大。赤枠内の「RP4」が、PC-2700から追加された抵抗

 こうした設計の困難さや互換性の確保の難しさを鑑みて、JEDECは標準的なDIMMのガーバーを策定した。国内では当時、メルコ(現バッファロー)がこのJEDEC標準ガーバーの策定に参加していた。

 ただし、このJEDECの標準ガーバーを使えば安定性は高いものの、コストも高くなった。そのため一時期国内では、以下のようなDIMM製品が混在する状況だった。ノーブランドのまともに動かない製品と、メーカーブランドのちゃんとした製品では、価格が4倍近く違うなんて状況すらあった。

  • JEDEC標準ガーバーと標準のDDR-SDRAMチップを搭載したもの
  • JEDEC標準ガーバーを使っているが、チップが規格外
  • JEDEC標準ガーバーに見える非標準品で、抵抗を搭載したもの
  • 独自ガーバーながら標準のDDR-SDRAMチップで互換性を確保したもの
  • 独自ガーバーで、チップも規格外

 この状況が多少なりとも緩和されていったのは、メモリーのトレンドがDDRからDDR2に移行することで、「技術力が足りない分値段で勝負」だったメーカーが淘汰されたことが理由のひとつである。安くても動かない製品は、さすがに敬遠されたわけだ。余談ながら、秋葉原のパーツショップなどでDIMMを購入すると、「○○円追加で相性保障をします」とか言われるが、それはこの頃のひどい互換性のなさが生んだサービスである。

 DDR-SDRAMからDDR2-SDRAMへの移行では、SDRAMからDDR-SDRAMの時のような混乱は「見かけ上は」なかった。しかし信号速度が2倍になるということは、当然信号の揺らぎなどのマージンも半分になる。おまけに電圧を2.5Vから1.8Vに下げたことで(DDR-400のみ2.6V)ノイズ耐性も低くなり、DIMMやDIMMソケットの作り込みはさらに難しくなった。

 DIMMの互換性に関する問題は、こうした淘汰を経てだいぶ減ってはいる。しかし根絶されたわけではないことは、読者の皆様もご存知のとおり。最近筆者の環境でも、「Xtreme Memory Profile」(XMP)対応のDDR3 DIMMを借用したら、「AMD 890FX」チップセット搭載のマザーボードでは問題なく動作するのに、「Intel P67 Express」のマザーボードではパワーオン直後のPOSTすら動かない、なんてケースに遭遇している。

 DDR2の世代からは、技術力のあるメーカーがコストを掛けて積極的にガーバーを拡張するという例も見られる。以下の2枚のスライドは米Corsair社のメモリー「DOMINATOR」シリーズの例だ。

オーバークロック動作を前提に、DRAMチップの熱を表面のヒートシンクだけでなく、DIMM基板の胴配線経由でも積極的に逃がそうというメモリーモジュールのコンセプト(CorsairのIDF講演資料より引用、以下同)

このコンセプトに基づくDIMMの上側には、ヒートシンク接続用の巨大な空きパッドがある。DOMINATORシリーズの背が高いのは、単にヒートシンクのみならずDIMM基板自体も大型化しているためだ

 これはCorsairが「DHX」(Dual-path Heat eXchange)と呼ぶメモリーモジュールのコンセプトである。メモリーをオーバークロックすることを前提に、より高い放熱効率を持った基板を独自に設計したという話だ。似たようなことは、オーバークロック製品をリリースする主要なメモリーベンダーなら、どこでもやっている。

 これに加えてDDR3世代では、さらに内部の見直しも行なわれている。例えばDDR3では、「Fly-by」という新しい転送方式を採用している。これはDIMMの配線に合わせて、DRAMチップ側でタイミングを調整する仕組みである。これにより、チップ間での配線遅延にともなうばらつきを吸収するというわけだ。

 このように、DIMMにはさまざまな技術が盛り込まれている。しかしDDR3世代は大きな壁にぶつかっているのが現状で、DDR4世代が来るまでにはまだ当分時間がある。なぜDDR4まで時間がかかるのかという話を含めて、次回は「FB-DIMM」について解説したい。

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