遅延がやや長く、製品価格も高い
Registered DIMMがPCで使われない理由
Registered DIMMにも、もちろん欠点はある。まずレジスターを介することにより、Address/Commandの信号に若干の遅延が余分に発生してしまう。これをカバーするためには、レジスターでの遅延分だけメモリーコントローラーが早めに信号を出すか、データ側のタイミングを若干ずらして調整を取るしかない。
一般には、データ側のタイミングをずらすほうが楽だ。そのため、例えばUnbuffered DIMMでは「PC100 CL2」(CAS Latency 2)で動作していたメモリーチップを、Registered DIMMに載せた場合は「PC100 CL3」で動作させたりする。大容量のメモリーを搭載するサーバー分野ならこの欠点は許容されるが、小容量で性能を重視するPC向けでは、Registered DIMMが使われない主な理由がこれである。
またチップを余分に搭載する分、価格が上がるのも否めない。実際にはRegistered DIMMが必要となるのはサーバーだけなので、当然ながら製造数量も少なくなり、価格はかなり高めとなる。これもまたPC向けに採用されることがない理由になっている。
ちなみに、「Registered DIMMのみサポート」あるいは「Unbuffered DIMMのみサポート」というチップセットは多いが、信号レベルで見る限り両者の間に違いはない。サポートの有無はもっぱら「検証」の問題である。ようするに、PCは通常Registered DIMMのテストをしないし、サーバーは逆にUnbuffered DIMMをサポートしないことが多い。だからDIMM上の「SPD」を見て、サポートしないタイプのメモリーは弾くといった対処をしているのが一般的だ。
高速なメモリーに欠かせない
メモリーバスの「終端抵抗」
話を変えて、ここからはDDR世代からその先についての話をしよう。SDRAMに続いてDDR-SDRAMの世代がやってきて、DDR2/DDR3の各世代へと引き継がれたメモリーだが、その移行はそう簡単ではなかった。
SDRAMからDDR-SDRAMに続く世代の場合、信号の速度が倍になったことで、信号伝達の問題がいろいろ出てきた。まずは「反射波」の問題である。例えば鍋や桶に水を張り、水面の中央を指で揺らすと波が発生して外側に広がってゆく。鍋の内壁にぶつかった所で波は跳ね返り、今度は中央に向かって戻ってくる。この「どこかにぶつかって跳ね返ってくる」という性質は、電気も同じである。
図4のように、メモリーコントローラーから2枚のDIMMが装着されているケースを例に挙げよう。ある1本の信号線について、メモリーコントローラーの出口「A」と、DIMM #1の付け根「B」、DIMM #2の付け根「C」のそれぞれで、波形がどうなるかを考えてみよう。
まず「T=0」のタイミングで、Aから信号が出る。これは若干の時間差(配線の上を信号が通るのに必要な時間)の後、「T=1」のタイミングでBに届き、さらに遅れて「T=2」のタイミングでCに届く。問題はこのCで届いたあとだ。信号はCで行き止まりになるので、ここで反射波が発生してBに戻る(図4の赤線部)。つまり「T=3」のタイミングでは、DRAM #1にはメモリーコントローラーから来た信号と、DRAM #2から戻ってきた反射波の2つが重なり合ってしまうことになる。
この問題を避けるために、DDR-SDRAMではマザーボード上の配線に「ターミネーター」(終端抵抗)と呼ばれるものを設けている。下の写真左はSDRAM、右はDDR-SDRAMのメモリースロットだ。DDR-SDRAMはスロットの上側に膨大な部品が実装されているのがわかる。これがターミネーターである。
考え方としては、波が反射するから問題になるのであって、信号線の端で抵抗を使って信号を減衰させてしまえば反射の影響がなくなるというものだ。
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