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横浜に移転したレノボ大和研究所で聞く

教えることをケチるな、ThinkPad開発者・内藤氏

2011年04月19日 09時00分更新

文● 大河原克行

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NECとは早く仕事をしたい

── 合弁を進めているNECパーソナルプロダクツには、PCの開発部門として米沢事業場があります。大和研究所との役割分担はどうなりますか。

内藤 最終的な契約が完了していませんから、まだ具体的な話し合いを進めているわけではありませんし、上下関係を作るとか、どちらかに統合するといったようなことも考えていません。

 ただ、レノボ・グループのなかでは、約500人の大和研究所の社員が、日本代表として孤軍奮闘してきたものが、米沢事業場が加わることで、日本の開発チームの力や存在感が大きくなるのは間違いない。

 かつて、大和研究所に導入していた各種試験設備のコントロールマシンには、NECのPC-9800シリーズが使われていましたから、私もPC-9800を使用したユーザーです(笑)。そして、あれだけの高いシェアを獲得するPCを開発するチームは、私の憧れでもあった。早く一緒に仕事をしたいですね。

── どんなシナジー効果を期待していますか。

内藤 2つの組織が、同じ技術やノウハウを持った集団だとすれば、シナジーに対する期待値は低くなります。重複部分があれば、1+1は2以下になりますから。ただ、大和研究所と米沢事業場は明らかに違うものを持っている。

 だからこそ、2以上のシナジーにつなげたい。

 NECパーソナルプロダクツは、外から見ていると、コンシューマに強い知識と技術を持っている。一方で、大和研究所はビジネスPCの開発ノウハウがある。また、日本向けの製品開発に強い米沢事業場と、グローバル向けの製品開発で実績がある大和研究所という違いもある。2つの研究開発チームの連携は大きな力になると思います。


「レノボのPC? う~ん」とは言わせない

── 内藤副社長は、レノボ製品全般を担当するチーフ・デベロップメント・オフィサー(CDO)に就任しましたね。これによって、レノボのものづくりはどう変わりますか。

内藤 レノボは、ビジネスユニットごとに開発体制を持っています。それぞれのビジネスユニットごとに、市場が求める製品を開発できるという点ではいいのですが、重複する技術を開発したり、お互いの技術を使えばもっと良くなるという場面も見受けられる。お互いを有機的に連携させることが必要であるという実感があるのです。

 ですから、例えば、大和研究所のエンジニアが別のビジネスユニットのエンジニアを支援するといった体制、逆に北京やラーレイのエンジニアが大和研究所を助けるといった体制を作り上げたい。

 明日の製品を開発する上では、ビジネスユニットごとにバラバラだった体制を、プロダクトグループ全体として連携できるようにし、カチカチのサイロ体制を崩していかなくてはならない。技術だけでなく、ノウハウや風土といったとこも共有していきたいですね。そこに私の役割があるといえます。

 例えば、外から見ても、「ThinkPadはどういうPCか」と質問すると、なんらかの回答が出てくると思います。また、IdeaPadといった場合にもなにかしらの回答が出てくるでしょう。しかし、レノボのPCといったときに、なにかひとつの固まったイメージがあるかというと、「うーん」と唸ってしまう人が多いのではないでしょうか。

 ThinkPadは大和で開発し、IdeaPadは北京で開発し、それぞれ事業部が違いますから、統一したメッセージが出しにくい環境にあった。レノボのPCとはこういうPCなんだというメッセージを出し、それを市場に定着させたい。CDOの仕事はそこに尽きるでしょう。これは1年では達成できないものですし、5年では長すぎる。3年ぐらいで確立したいですね。

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