伝統の堅牢性を受け継ぐ、試験設備
── 入居したみなとみらいセンタービルは、最上階である21階、20階にオフィスを置いていますね。4階から上はオフィスフロアだから納得できるのですが、試験設備が入っている2階は、飲食店やコンビニなどが入っている商業施設の真ん中ですね。その立地には驚きました。
内藤 試験設備を入れるには、設備を導入できる強度を持つ床であること、一定の天井高があることなどが条件となりました。そうした条件で探していた結果、見つかったのがこのビルです。ご指摘のように、2階部分は商業施設を前提として用意されたフロアですから、その点では驚かれるかもしれません。
しかし、ビルオーナーの理解や、横浜市の協力もあって、ここを研究所として使用することができた。振動する試験設備については駐車場の上に設置するなど、配慮したレイアウトにもしています。
── 大和研究所は、神奈川県大和市にあったからこその名前ですが、みなとみらいに移転しても「大和研究所」の名前を継承した理由はなんでしょうか。
内藤 「横浜研究所」や「みなとみらい研究所」という候補もありました。研究所内でもいろいろと議論したのですが、この研究所はレノボの財産ですから、経営陣や他の国の社員はどう感じるのかを聞いてみようということなりました。
すると、世界中のセールスが長年に渡って「YAMATO LAB」という言葉を使って顧客に説明し、それが浸透しているので変えないで欲しいという声が返ってきた。一方で、ODMなどのパートナーに話を聞いても、慣れ親しんだ名前であり、強い想い入れがある名称だから変えない方がいいと。
社内、社外ともに大和研究所がいいという声が出ていたのです。それならば、大和研究所で行こうという結論に至ったわけです。
変わらないこと、そして変わること
── 新たな大和研究所になって、変わらないこと、そして変わることとはなんですか。
内藤 私は、レノボ・ジャパンになってから、ずっと言い続けたのは「ThinkPadは変わらない」ということでした。レノボになったことで、ThinkPadは悪い意味で変わってしまうのではないかという不安がユーザーの間にあったからです。
ThinkPadの開発コンセプトは、お客様の成功を支援するためのツールであるということ。仕事を効率化し、社会に役立つツールとして利用してもらいたい。そのために、PCという筐体を意識するようなものではいけない。
PCは透明の存在でなくてはならないのです。
ThinkPadが目指した部分はそこであり、この考え方はいまでも変わっていませんし、これからも変わりません。変化したことをあげるとすると、刺激のある場所に移転してきましたから、エンジニアたちの考え方が前向きになった気がします。世界との距離感が縮まったことを感じているようですし、上を向いて歩いているような感じがしますよ(笑)