「サービスがどう愛されるか」がカギになる
「しかし」と彼は続ける。
「これが、今までと最も違う点だ」とふたたびスライドを指したとき、思わず会場から笑いの声が上がった。そこに書かれていたのは意表をつく一言「LOVE」の文字だった。
「これまでは“どのくらい必要とされるか”が重要だった。音楽、石油、電気、航空券――あらゆるものが需要に支えられていた。でも、これからは“LOVE”がベースとなる。つまり“どれだけ愛されるサービスを作れるか”のビジネスになるのだ」
では、この5年で成長を続けた「愛」が支えるサービスは、どんなユーザーに支えられているのだろうか? 彼は愛されるウェブサービスには、3種類のモデルがあると考えている。
- 1. 時間が経つと製品の価値が下がるもの
- 「ゆでたての麺料理みたいに、買ったそのときの価値が最大で、どんどん下がっていくもの。つまりすぐにお金を払ってもらうモデルがいい。ラーメン屋でフリーミアムモデルをあまり見かけないのは、これが理由だろう」
- 2. 時間が経っても製品の価値が変わらないもの
- 「新聞や雑誌の購読があたる。私が読んでいる、経済誌『Economist』は、毎週のように価値や価格が変わるものではない。映画でもビデオのストリーミングでも同じだ。広告モデルが当てはまるだろう」
- 3. 時間が経つほど製品の価値が上がっていくもの
- 「これができれば素晴らしい! 実はEvernotがこれだ。わたしたちのコンテンツはあなたの“記憶”だ。毎日使えば使うほどいいものになっていく。収入は広告に頼らず、顧客の裁量で決まる。論理的ではないだろうか?」
まとめると、開発、販売、広告――すべて「もともとあったもの」を使い、いいものをつくる。有料プランを使うかをユーザーの裁量にまかせ、あくまでも基本無料を貫き通す。それがEvernoteの思想だ。