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震災から1ヵ月、グーグルは「まだ走り続けている」

2011年04月15日 12時00分更新

文● 広田稔

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テレビCMを寝ずに制作・配信

―― パーソンファインダー以外にも、数多くのサービスを立ち上げてきました。三浦さん自身は何を作られたんですか?

三浦 「避難所情報」を担当しました。地震直後、この規模なら避難所は当然必要になると考えて情報収集を始めたんです。以前、阪神・淡路大震災のボランティアを経験したときに、避難所の情報が一元管理されていなかったために苦労したので。その経験から、避難所の情報はなるべく早い段階からまとめておいた方が役に立つだろうと考えたんです。

避難所情報

―― 以前にも震災を経験されていたんですね。

三浦 当時は大学生で、私は京都に住んでいたので、直接の被害にはあってないんですが、ボランティアには数ヵ月行ってました。当時も、避難所の情報をまとめることに腐心していたんです。今回、どんなタイミングでどういう情報が必要なのかというのは、何となく分かっていました。

―― 運命というのは不適切かもしれませんが、先の震災での経験が役に立った。

三浦 ええ。前の震災のことを考えると、今やるべきこと、やれることがたくさんあるので、とにかく「働かないと!」と。

―― 最初に避難所情報をリリースしたのはいつですか?

三浦 12日の午前1時半ぐらいです。その段階で避難所の情報が公式発表されないのは目に見えていたんですけれども、ネットで行政があらかじめ避難所に指定している場所を調べてまとめていきました。サイトにつながらなくても、グーグルにはキャッシュがありますし。そうして多分数千件ほど避難所があって、がんばれば人の手で整理できるんじゃないかということが見えてきた。

ブラッド 最初は「Googleドキュメント」のスプレッドシートで整理していましたね。

三浦 PDFで出ている情報も、共有したスプレッドシートに入力していったりしてね。

ブラッド 地震当日に止まっていた電車が、12日の朝になるとだいぶ復旧してきたので、僕は一旦帰ろうとしていたんですが、そのときにも三浦さんはずっと入力していましたね。

寝ずに入力を続けていたという三浦さん

―― 寝ずにやっていた?

三浦 最初は断片的な情報しかないと思っていたら、国の機関がまとめた具体的なデータが見つかったりとかして、つい。

富永 みんな、情報に対しての情報への執念がすごかったですね。

三浦 「世界中の情報を整理して、人々が利用できるようにする」というのは、うちの会社のミッションなんです。それがずっと頭にありました。それができるのはウチが一番だろうと。エンジニアもいるし、コンピュータの資源もある。それにグーグルは検索のプロです。うちががんばって、少しでも早く情報を提供した方が世の中のためになるだろうと。

―― 作った後には告知が必要ですよね。そこで広報が動いた。

富永 被災地で放送しているラジオ局や、現地の地方紙、毎日新聞さんが被災地で配っている「希望新聞」などで紹介してくださいました。もちろんTwitterで多くの方が自発的に広めてくれたのもあります。

―― クライシスレスポンスはエンジニアが頑張っているイメージでしたが、全社を挙げたプロジェクトだったんですね。

富永 災害情報特設サイトのテレビCMは、マーケティングチームが寝ないで作ってくれました。被災地にも情報をとどけるために、新聞広告なども活用しています。チームが整理してアクセスできるようにした情報が、必ず誰かの役に立つと思っていました。

―― しかし広告ですごくお金がかかってますよね。

富永 ええ。でも、それに誰かが文句をいう社風じゃないんです、グーグルは。

(次ページに続く)

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