AMD製CPUのラインナップ
次にAMD製のCPUについて解説していこう。AMD製のデスクトップPC向けCPUは上位版の「Phenom II」と「Athlon II」の2つのセグメントに分かれているが、ソケットはすべて「Socket AM3」で統一されているためプラットフォームの選択は簡単だ。しかし、製品ラインナップが多く価格差も小さいため、どのCPUを選択すればいいか迷うことが多いだろう。そのため今回はセグメントごとにわけて製品を確認し、お勧めCPUを紹介していきたいと思う。
また、省電力向けとして「Fusion APU」の「AMD E」シリーズのが販売されているが、こちらはIntelのAtomと同様、デスクトップCPUに比べて性能を抑えて消費電力を削減したモデルとなっている。
「Phenom II」のラインナップ
Phenom IIは、コア数によって3タイプに分けられる。6コアの「X6」、4コアの「X4」、2コアの「X2」だ。
Phenom CPUスペック表 | ||||||
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CPU | Phenom II X6 1100T BlackEdition |
Phenom II X6 1090T BlackEdition |
Phenom II X6 1065T |
Phenom II X4 970 BlackEdition |
Phenom II X4 965 BlackEdition |
Phenom II X4 955 |
開発コード | Thuban | Thuban | Thuban | Deneb | Deneb | Deneb |
プロセスルール | 45nm | |||||
コア数 | 6 | 6 | 6 | 4 | 4 | 4 |
動作クロック | 3.3GHz | 3.2GHz | 2.9GHz | 3.5GHz | 3.4GHz | 3.2GHz |
L2キャッシュ | 512KB×6 | 512KB×6 | 512KB×6 | 512KB×4 | 512KB×4 | 512KB×4 |
L3キャッシュ | 6MB | 6MB | 6MB | 6MB | 6MB | 6MB |
TDP | 125W | 125W | 95W | 125W | 125W | 125W |
CPU | Phenom II X4 910e |
Phenom II X4 905e |
Phenom II X2 565 BlackEdition |
Phenom II X2 560 BlackEdition |
Phenom II X2 555 BlackEdition |
|
開発コード | Deneb | Deneb | Callisto | Callisto | Callisto | |
プロセスルール | 45nm | |||||
コア数 | 4 | 4 | 2 | 2 | 2 | |
動作クロック | 2.6GHz | 2.5GHz | 3.4GHz | 3.3GHz | 2.2GHz | |
L2キャッシュ | 512KB×4 | 512KB×4 | 512KB×2 | 512KB×2 | 512KB×2 | |
L3キャッシュ | 6MB | 6MB | 6MB | 6MB | 6MB | |
TDP | 65W | 65W | 80W | 80W | 80W |
まず最も注目すべきはAMD初の6コアCPU「Phenom II X6」の存在だ。基本設計は、これまでの「Phenom II X4」と同様ながら、コア数を6つに増やした製品だ。さらに、新機能として「TurboCore」が用意されている。これは、すべてのコアに負荷がかかっていない状態で発熱量に余力がある場合に、残りの3コアに対して自動的に動作クロックを定格よりも上に引き上げ性能を向上させる機能で、Intelの「TurboBoost」と同じようなものと考えてもらえばいい。
なお、Phenom II X4や「Phenom II X2」についてはクロックが向上したモデルが発売されているものの昨年から大きな違いはない。また「BE」ことBlackEditionは倍率固定が解除されており、CPU倍率が自由に変更できる点も、Intelの“K”型番と同様だ。
「Athlon II」のラインナップ
Athlon IIもPhenom II同様、コア数によって製品名が決められており、現在は「X4」、「X3」、「X2」の3タイプが存在している。
Athlon CPUスペック表 | ||||||
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CPU | Athlon II X4 645 | Athlon II X6 640 | Athlon II X4 615e | Athlon II X3 450 | Athlon II X2 265 | Athlon II X2 260 |
開発コード | Propus | Propus | Propus | Rena | Ragor | Ragor |
プロセスルール | 45nm | |||||
コア数 | 4 | 4 | 4 | 3 | 2 | 2 |
動作クロック | 3.1GHz | 3GHz | 2.5GHz | 3.2GHz | 3.3GHz | 3.2GHz |
L2キャッシュ | 512KB×4 | 512KB×4 | 512KB×4 | 512KB×3 | 1MB×2 | 1MB×2 |
TDP | 95W | 95W | 45W | 95W | 65W | 65W |
CPU | Athlon II X2 255 | Athlon II X2 250 | Athlon II X2 250e | Athlon II X2 245e | Athlon II X2 240e | |
開発コード | Ragor | |||||
プロセスルール | 45nm | |||||
コア数 | 2 | |||||
動作クロック | 3.1GHz | 3GHz | 3GHz | 2.9GHz | 2.8GHz | |
L2キャッシュ | 1MB×2 | |||||
TDP | 65W | 65W | 45W | 45W | 45W |
Athlon IIとPhenom IIの違いは、L3キャッシュの有無となる。こちらもコア数によって「Athlon II X4」、「Athlon II X3」、「Athlon II X2」の3つのラインナップが用意されている。またモデルナンバーの後ろに「e」が付くモデルは省電力モデルでTDPが45Wと低くなっている。
中間モデルを選択するメリットは少ない
AMDプラットフォームで性能を重視する場合は、最上位のPhenom II X6をお勧めしたい。最上位となる「Phenom II X6 1100T BE」で2万1500円前後、「Phenom II X6 1090T BE」なら1万9000円前後と比較的手を出しやすい価格となっている。また、コア数ではなくクロック周波数を重視するなら3.5GHzとAMDで最高クロックを誇る「Phenom II X4 970 BE」がいいだろう。
逆にコストパフォーマンスを重視するなら3GHzを超えるクロックながら5000円前後で購入できるAthlon II X2のもっとも安価なモデルがおすすめ。いずれにしても価格差が小さく中間モデルに魅力がない。購入前にハッキリとした方針を固め、最上位または最下位モデルを選択するのがいいだろう。
また、Phenom II X2やAthlon II X3は、無効化されているコアやキャッシュを有効化することでPhenom II X4やAthlon II X4として使用できる製品もあり、マザーボードにもコアアンロック機能を謳う製品も発売されている。しかし、このような使い方はオーバークロック同様に保証対象外となるだけでなく、確実に復活できるわけではない。あくまでも遊びの範疇で、安定性を重視するなら手を出さないほうが無難である。
AMDプラットフォームのマザーボード
AMDのSocket AM3に対応する主なチップセットにはGPU機能のない「AMD 890FX」、「AMD 870」と、GPU機能のある「AMD 890GX」、「AMD 880G」がある。
AMD チップセット表 | ||||
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チップセット | AMD 890FX | AMD 870 | AMD 890GX | AMD 880G |
PCI Expressレーン数 | 42 | 22 | 22 | 22 |
CrossFire X対応 | ○ | - | ○ | - |
内蔵GPU | - | - | Radeon HD 4290 | Radeon HD 4250 |
内蔵GPUクロック | - | - | 700MHz | 560MHz |
対応サウスブリッジ | SB850 | SB850/SB710 | SB850 | SB850/SB710 |
AMDの内蔵GPUはオンボードとしては高性能だが、ゲームを快適にこなすほどではない。ゲーム向けハイエンド構成を考えているならフルレーンのCrossFire Xに対応した「AMD 890FX」搭載マザーボードがいいだろう。
シングルGPUや内蔵GPUを使ったハイエンドPCを考えているなら「AMD 890GX」マザーボードがいい。AMD 890FXやAMD 890GXは上位版のチップセットのため、独自の冷却機能や良質のコンデンサを採用するハイエンド向けの製品が多くなっている。また、これらのチップセットと組み合わせて使用されるサウスブリッジの「SB850」はSATA3.0に対応している。SATA3.0対応のSSDと組み合わせれば、高速なストレージ環境を構築できるのも魅力だ。
AMD 870、AMD 880Gは廉価版のチップセットということで、安価な製品が多くなっており、コストを重視する場合にはこちらを選択するといいだろう。ただし、これらのマザーボードにはサウスブリッジに「SB850」を採用した製品と「SB710」を製品が混在している。SATA3.0を使いたい場合は必ず「SB850」を採用した製品を選択してほしい。
AMD サウスブリッジ表 | ||||
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サウスブリッジ | SB850 | SB710 | ||
ノース-サウスブリッジ帯域 | 2GB/s | 1GB/s | ||
SATA 転送速度 | 6Gbps | 3Gbps | ||
SATAポート数 | 6ポート | 6ポート | ||
RAIDサポート | 0/1/5/10 | 0/1/5/10 | ||
USB2.0ポート数 | 14 | 12 | ||
PATA | - | ○ |
Atom対抗となるFusion APU「AMD E」シリーズ
AMD初のCPU/GPU統合プロセッサFusion APUの第1弾としてリリースされた「Eシリーズ」と「Cシリーズ」。いずれも低価格、省電力向けのプロセッサで、これまでAMDが苦手としてきたレンジをカバーするべく投入された製品群だ。
CPUコアには低消費電力向けの「Bobcat」を採用し、GPUコアは「Radeon HD 6310」(Eシリーズ)または「Radeon HD 6250」(Cシリーズ)を採用する。自作市場にはAMD Eシリーズを採用したマザーボードが発売されており、IntelのAtom対抗として注目を集めている。
Fusion APUスペック表 | |||||||
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APU | E-350 | E-240 | C-50 | C-30 | |||
開発コード | Zacate | Zacate | Ontario | Ontario | |||
コア数 | 2 | 1 | 2 | 1 | |||
動作クロック | 1.6GHz | 1.5GHz | 1GHz | 1.2GHz | |||
L2キャッシュ | 512KB×2 | 512KB | 512KB×2 | 512KB | |||
内蔵グラフィックス機能 | Radeon HD 6310 | Radeon HD 6310 | Radeon HD 6250 | Radeon HD 6250 | |||
DirectX | DirectX11 | ||||||
シェーダプロセッサ | 80基 | ||||||
内蔵グラフィックス動作周波数 | 500MHz | 500MHz | 280MHz | 280MHz | |||
TDP | 18W | 18W | 9W | 9W |
AMD EシリーズもAtomと同じく単体販売されていないため、マザーボードに組み込まれた状態で購入することになる。価格は1万2000円前後からとAtomに比べるとやや割高。ただその分Atomよりグラフィック性能が高く、SATA3.0にも対応するため、省電力かつ性能にもこだわったPCを作りたい場合に最適だ。性能については「AMDのFusion APUは省電力PCの救世主となるか?」に詳しいので参照していただきたい。
(次ページへ続く)
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