開発キット「Dragon Mobile SDK」の公開
――先日Dragon Mobile SDKを公開されましたね。その狙いはどこにありますか?
Masih:この2年ほどの間に、スマートフォンなどモバイル機器を取り巻くエコシステムが変貌し、そのアプリケーションも複雑化しました。その結果、指入力以外の入力メカニズムの必要性も増したといえるでしょう。特に自動車の分野は変化幅が大きく、音声入力システムを採用した車種も現われています。実際、先日発表された「Audi A8」の統合ナビゲーションシステム「MMI」(MultiMedia Interface)には、われわれの音声認識技術が採用されています(関連リンク)。
これらの前提として、今後スマートフォンなどのモバイル端末はますます複雑化/高機能化するはずという予想があります。そうなると、ユーザーとデバイスがどのように情報をやり取りするか、インターフェースを解決することが課題として浮上します。音声認識技術のリーダーを自負するわが社にとって、いろいろな取り組みが考えられます。
――Dragon Mobile SDKの利用条件を教えてください。また、SDKを利用して開発したアプリの料金体系はどのようになっていますか?
Masih:すべてのデベロッパーに利用していただくために、Dragon Mobile SDKは無料で提供します。SDKを通じ、ぜひわが社の音声認識技術を試していただきたいと思います。ただし、クラウドサービスに関しては90日間という試用期間を設けています。90日間というのは、音声認識機能がアプリの機能・サービスに適合するかどうかを測るには十分な時間ではないでしょうか。
開発したアプリをエンドユーザー向けに公開した際には、配布元に対しパーユース(利用ごとの課金、Pay per Use)で課金することになります。ライセンス供与という形でのサービス提供は実施していません。これは、わが社の音声認識技術を組み込んだアプリであっても、その機能が使われない/利用頻度が低い可能性を考慮してのものです。
――1回あたりの料金はどの程度になりますか? パーユースですと、利用回数が増えれば売り切り型アプリの販売価格を超過する可能性がありますが、その点に対する考えも教えてもらえますか?
Masih:1アクセスあたり、米ドル換算でおよそ1~2セント(1セントは直近の為替相場で約0.8円)になります。クラウドへのアクセスがなければ、課金は発生しません。主要な通貨に対応していますから、日本国内で利用された場合は円建てでの請求となります。
われわれが提供するクラウド型の音声認識サービスは、対デベロッパーにおいてのビジネスで、対エンドユーザーではありません。どのように開発コストを回収するか、利益を上げるかという採算面に関しては、デベロッパー側に委ねています。
――Dragon Mobile SDKが対応しているのはiOSとAndroidですが、今後増やす計画はありますか?
Masih:現在サポートしているモバイル機器用OSは、iOSとAndroidのみです。ただし、これはセルフサービス的なプログラムだからであって、顧客の要望があり別途契約を交わせばそのかぎりではありません。具体的には、Simbian OSやWindows Mobileなど、他のプラットフォームに対応することは可能です。
われわれは、今後モバイル分野がどのように変わっていくかを注視しています。iOSとAndroid以外のプラットフォームについても、セルフサービス的なサポートに追加される可能性はあります。