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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第16回

「若者の車離れ」、魔女っ子たちが食い止める?

車のCMではなく、本気のアニメを――スバルの挑戦【前編】

2011年05月21日 12時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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広告だけど、商品は出さないでほしい


―― アニメ制作は「エヴァ」のガイナックスに依頼されています。当初はどのようなアニメにしてほしいと伝えましたか?

鈴木 商品になる車を登場させてほしいというお願いの仕方はしなかったです。いわゆる「プロダクトプレイスメント」は避けたくて、むしろ車そのものをあまり出さないでほしいとお願いしました。


―― どうして広告なのに自社商品を出さないことに?

鈴木 もし車が出てくるアニメを送り出しても、お客さんには「あ、車が出てきたな」とだけしか認識していただけないだろうなと思ったんです。テレビCMの場合なら、きれいな車のカットを出せばある程度は商品の魅力が伝わると思います。でも、インターネットはテレビとは違うと思うんです。

 インターネットのお客様にはおそらく、車という切り口だけでは「響かない」んです。それは僕自身がインターネット広告の担当者として思う、ひとつの実感です。今の時代は、車が若者の消費財の代表だったころとは違いますよね。


―― 「若者の車離れ」というお話ですね。実際に、そんな現象は起きているのでしょうか。

鈴木 「絶対に車じゃなきゃだめ」という認識はなくなってきているな、というのは確かに思います。それは、個人個人がさまざまなものに興味を持って選ぶ「個の時代」になっただけで、車も選ばれるひとつになったということだと思うんです。でも、車自体が持つ価値は何も変わっていないとも思うんですよね。快適さや利便性、走る楽しさというのは、いつの時代も変わらないと思います。


―― 「個」の時代になった中で、車が若者にとって「一番の消費財」ではなくなったと。そんな中で、どのような形でお客さんにアプローチしていこうと思いましたか。

鈴木 僕のような広告担当者は、お客さんの層を見極めて、その層に向けてうまく届くような広告を提供していくことが仕事なんですが、「お客さんの層をどうセグメント(区分け)していくか」は、どの業種のマーケティング担当者も、いま一番の課題だと考えていると思います。

 たしかに実際、都心離れ、車離れ、家離れなど、若者はさまざまなものから「離れている」ように見えるかもしれません。でも僕自身、実際にそんなことはあまりないだろうと思っているんです。


―― と、言いますと?

鈴木 「若者の車離れ」という言葉は、お客さんを「世代」で区切っている言葉だと思うんです。でもお客さんの層をくくるキーワードは、もう「世代」ではないんじゃないかと。インターネット広告の担当になってから特に思うのですが、いわゆる「年齢」「性別」「ライフスタイル」のような従来のデモグラフィック的な切り方では、お客さんをくくれなくなってきていますね。

※ 顧客データ分析手法のひとつ。地域、所得、職業、学歴などの社会経済的な特質データに基づいたもので、広告代理店で使われる「F1層」といった分類がそれに当たる


(次ページに続く)

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