消費電力を確認
最後に消費電力についても確認しておこう。今回は「Watts up? PRO」を使い、30分放置して最も低い状態をアイドル時、3D Mark11実行中、最も消費電力が高かった時点を高負荷時とした。
まずアイドル時の消費電力だが、Radeon HD 5770と比較すると約16W高く、ミドルレンジとしてはやや高めの数値を記録。ただ、GeForce GTX 550 Tiに比べれば約10W低く、性能を考えれば妥当な数値とも言える。
問題は高負荷時の数値だ。Radeon HD 5770より約26W、「Radeon HD 6850」より約10W高くなった。実際、TDP程の差はつかなかったものの、上位モデルであるRadeon HD 6850より消費電力が多いというのは間違いなさそうである。
モデルナンバー通りの性能ながら、現時点では少々厳しい
ここまでテストしてきた感想を率直に述べるのなら、Radeon HD 6790はまさにモデルナンバー通りRadeon HD 5770とRadeon HD 6850のちょうど中間の性能を持ったGPUとなる。さらに、市場で対抗製品となるNVIDIA GeForce GTX 550 Tiとの比較では総じて高いパフォーマンスを発揮しており、性能についてはまったく問題ない。
しかし、性能以外をほぼ度外視できるハイエンド製品と異なり、価格等も含めた全体のバランスも重要となるミドルレンジ製品ということを考えると、少々厳しいと言わざるを得ない。
まず、上位モデルであるRadeon HD 6850を上回る消費電力。その結果、Radeon HD 6850でさえPCI-E用の補助電源コネクタは6ピン×1なのに対し、その下位モデルが6ピン×2構成というのはやはりおかしい。ミドルレンジ層のユーザーへ向けた製品ならば、やはり6ピン×1としてほしいところである。
次にカードの長さ。ボードサイズは実測で約250mm。Radeon HD 5770の220mmより30mm長く、上位のRadeon HD 6870とほぼ同じサイズだが、やはりここもミドルレンジ帯の製品であればGeForce GTX 550 Ti(約209.6mm)と同等クラスの210mm前後に抑えてほしい。もっとも、このクラスのカードであれば、オリジナル基板/冷却クーラーを採用する製品も多いと思われるので、そのあたりは各メーカーの手腕に期待したいところでもある。
そして最後が市場想定売価。今のところ秋葉原界隈の複数ショップ情報によれば、販売価格は1万6000円~1万7000円前後となりそうである。何度も言うが、より高性能で消費電力の少ないRadeon HD 6850が、こちらは現在(安いモデルであれば)1万9000円前後で購入が可能となる。今ここでRadeon HD 6790を選択するならば、あと数千円の追加投資でRadeon HD 6850を購入したほうが、ハッキリ言って幸せになれるのは間違いない。
逆に消費電力等は問題ではないという人にとっては、Radeon HD 6790の価格が1万円前半まで落ちてくれば、ミドルレンジとして高い性能を実現している同GPUを選択する大きな理由にはなる。
ここからはあくまで筆者の推測だが、Radeon HD 6790のスペックがこのようなものであった以上、AMDとしてはやはりRadeon HD 5770の正統後継モデルを用意しているのではなかろうか。今更ではあるが、Radeon HD 6850/6870の開発コードネームは“Barts”であり、今回登場したRadeon HD 6790は“Barts LE”である。また、あえてRadeon HD 6790というネーミングを採用してきた点を踏まえても、やはり単純に「Radeon HD 6770」という“LE”ではない別ラインナップの自作市場向けGPUがあって然るべきと思ってしまうのは私だけではないはずだ。
この連載の記事
-
第439回
自作PC
暴れ馬すぎる「Core i9-14900KS」、今すぐ使いたい人向けの設定を検証! -
第438回
デジタル
中国向け「Radeon RX 7900 GRE」が突如一般販売開始。その性能はWQHDゲーミングに新たな境地を拓く? -
第437回
自作PC
GeForce RTX 4080 SUPERは高負荷でこそ輝く?最新GeForce&Radeon15モデルとまとめて比較 -
第436回
デジタル
環境によってはGTX 1650に匹敵!?Ryzen 7 8700G&Ryzen 5 8600Gの実力は脅威 -
第435回
デジタル
VRAM 16GB実装でパワーアップできたか?Radeon RX 7600 XT 16GBの実力検証 -
第434回
自作PC
GeForce RTX 4070 Ti SUPERの実力を検証!RTX 4070 Tiと比べてどう変わる? -
第433回
自作PC
GeForce RTX 4070 SUPERの実力は?RTX 4070やRX 7800 XT等とゲームで比較 -
第432回
自作PC
第14世代にもKなしが登場!Core i9-14900からIntel 300まで5製品を一気に斬る -
第431回
デジタル
Zen 4の128スレッドはどこまで強い?Ryzen Threadripper 7000シリーズ検証詳報 -
第430回
デジタル
Zen 4世代で性能が爆上がり!Ryzen Threadripper 7000シリーズ検証速報 -
第429回
自作PC
Core i7-14700Kのゲーム性能は前世代i9相当に!Raptor Lake-S Refreshをゲーム10本で検証 - この連載の一覧へ