ベンチャー企業からSprintと組んで
WiMAXのエリア拡大を進めるClearwire
3月に入り、アメリカのキャリアが活発に動きはじめた。3月10日にはWiMAX事業会社ClearwireのCEOを含む幹部3人が辞任。20日にはアメリカのキャリアとしては第2位のAT&Tが、T-Mobile USAを390億ドルで買収する計画を発表して業界を驚かせた。このうちClearwireはアメリカのキャリア第3位であるSprint Nextelが54%を出資するジョイントベンチャーで、いずれも4G時代をにらんだ戦略確立を急ぐ動きといえる。
Clearwireは、WiMAXを中心とした無線ブロードバンドを事業とするベンチャーとして2003年に創業された。2008年5月に同社はSprintと同名の合弁会社を設立して再スタートを切った。これにより、Sprintは自社のWiMAX事業「xohm」をClearwireと合体させ、ClearwireはWiMAXネットワーク構築を進める資金を得た。
一方のSprintはClearwireのWiMAXをMVNOとして利用し、次世代“4G”サービスのWiMAXを効率よくスタートできる、という狙いだ。新生Clearwireの出資比率はSprintが54%、Clearwireの以前からの株主が27%となり、残りはIntel Capital、Google、そしてケーブルテレビ事業者のComcastなどが占める。
ここに至るまでの背景を少し説明すると、アメリカでは2008年当時スマートフォンブームによるパケット通信需要が急増し、各キャリアの次世代(“4G”)戦略が注目されていた。SprintはCDMA系キャリアで、同じくCDMA系キャリアのVerizonが4G(厳密にはLTEもWiMAXも3.9Gにあたるが、アメリカではこれらの技術を“4G”とマーケティングしており、ITUも4Gと称することを認めた)でLTEを採用することを2007年に発表していた。
2008年9月、Sprintはメリーランド州ボルチモア市でWiMAXの商用サービスをスタート。Clearwireとしては2009年1月にオレゴン州ポートランドで「Clear」というブランドでWiMAXサービスを開始した。その後も提供エリアを拡大し、現在全米70以上の都市(人口にして1億1900万人)をカバーしているという。
資金難に加え、親会社との関係が悪化
その間、ClearwireはCEOにBill Morrow氏を迎え入れ、オペレータ事業のテコ入れを図った。Vodafone出身のMorrow氏はボーダフォン日本法人や日本テレコムの社長を務めたことがあり、ご存知の読者も多いと思う。Morrow氏のもとでClearwireはWiMAXネットワークの構築やエンドユーザー向けのサービスパッケージ強化などを進めてきた。
だが決算報告で赤字を計上して、資金難が報じられるようになった2010年後半には、親会社であり最大の顧客であるSprintとの関係が悪化していることが明るみになる。SprintはClearwireのWiMAX回線を借りて4Gサービスを提供しているが、このMVNO契約で双方が歩み寄れないというのが原因だ。
それと関連して、ClearwireがClearブランドでロゴ付きのモデムとサービスを直接ユーザーに提供するのをSprintが快く思っていない心情なども報じられた。Clearwireの2010年第4四半期の業績報告によると同期の純増数は150万人で、このうち自社で直接契約する顧客は12万6000人。残りの142万人はSprintやComcastなどMVNO経由となっている。つまり同社の主事業はMVNOで、中でも潜在ユーザーを抱えるSprintは重要な存在となる(なお、Clearwireのユーザー数は現在440万人で、2011年には倍増となる880万人を目標としている)。
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