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鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第30回

新開発高画質エンジンなど、画質も機能も大幅進化!

お買い得度満点!? ソニー「BRAVIA EX720」を試す

2011年03月23日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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気になる3D画質や新高画質エンジンの実力を
従来の最上位モデル「LX900」と比較

新開発の高画質エンジン「X-Reality」

新開発の高画質エンジン「X-Reality」

 今回、LX900と見比べながら画質をチェックした。スタンダードモデルのEX720と従来の3D対応高機能機であるLX900を比較する最大の理由は高画質回路にある。EX720は昨年モデルの「ブラビアエンジン3」から、新開発の「X-Reality」となったからだ。

 X-Realityはソニー独自の“オブジェクト型超解像技術”が盛り込まれ、映像をディテール、輪郭、色成分などの要素ごとに分析し、それぞれを最適に調整することで、より鮮明な映像を再現する。

 このほか、映像の変化の少ない部分(平坦部)を抽出し、その部分にはディテール再現を高めるエンハンス効果を適用しないことで不要なノイズの強調をなくす「平坦部エリア検出」などがある。もちろん、ノイズリダクション技術などもさらに高精度化されるなど、大きく実力を高めている。

 高画質機能としては、昨年発売の上級機(HX900シリーズなど)と同じ、ディテールエンハンサーやエッジエンハンサーなどが備わっている。

 EX720は倍速(120Hz)表示のフルHDパネルを採用し、LEDバックライトはエッジ型。エリア駆動は採用しない。一方、LX900は4倍速(240Hz)駆動のパネルを採用し、前面のガラス板と液晶パネルを樹脂を挟んで一体化した「オプティコントラストパネル」を搭載。LEDバックライトはEX720と同じくエッジ型だ。

 つまり、高画質エンジンのパワーや機能はEX720が上。パネルの実力はLX900が優位という図式だ。

 まずは、気になる3Dの画質を見てみた。応答速度が不利な液晶の場合、3Dでは4倍速が必要と言われているし、実際のところ3D液晶テレビはほとんどが4倍速パネルを採用する。しかし、北米モデルなど海外では昨年からすでに倍速パネルの3Dテレビが発売されていた。国内モデルとしては本機が初。ミドルクラス向けとして投入された格好だ。

 応答速度の速いプラズマテレビが120Hzで3D表示が可能なように(60コマ表示×2で120コマ表示)、左右の映像を交互に表示する3D表示は、理屈で言えば液晶でも120Hzでの表示は可能だ。しかし、液晶では映像の書き換えに時間がかかるので、左右の映像が混ざってしまい、立体感が損なわれる“クロストーク”が発生しやすい。

 この点に関して、書き換え中の部分のLEDバックライトを消灯して目に映らなくする“LEDブリンキング”を併用し、さらに書き換え速度の向上などの技術でクロストークの発生を抑えている。

2D→3D変換機能「シミュレーテッド3D」も搭載。弱/中/強の3段階が選択できる。こちらの3D感の再現も昨年の3Dモデルと同等だった。ちなみに3Dメガネの明るさ調整も可能。好みに応じて明るくしたり、暗くするなどの調整ができる。通常はオートでいい

2D→3D変換機能「シミュレーテッド3D」も搭載。弱/中/強の3段階が選択できる。こちらの3D感の再現も昨年の3Dモデルと同等だった。ちなみに3Dメガネの明るさ調整も可能。好みに応じて明るくしたり、暗くするなどの調整ができる。通常はオートでいい

 果たしてその実力はどうか? 正直かなり疑わしい気分で本機の3D映像を見たのだが、思っていたほどクロストークが目立つこともなく、普通にきちんとした3D映像が楽しめた。4倍速のLX900とほぼ同等という印象で、クロストークが出てしまう部分では両方とも出てしまうし、本機だけがクロストークが目立つという場面もなかった。

 液晶による3D表示で気になる映像の微妙なチラツキ感もあまり感じることもなく、目の負担も少ない。これならば、特に倍速パネルだからと敬遠することなく、3Dテレビとして本機を選ぶことができると思う。もちろん、3Dテレビは今のところ興味なしという多くの人にとってはコストの高い4倍速パネルを使っていないため、価格も比較的お手頃という魅力がある。

新機能「ディテールエンハンサー」の比較。左が「切」で右が「強」。花びらの質感などディテール感が向上しているが、ノイズ感も目立たず不自然さが少ない

輪郭の再現性を高める「エッジエンハンサー」の比較。左が「切」で右が「強」。緑の茎の部分の輪郭がすっきりと再現され、ぼけた遠景から浮かび上がるような自然な立体感が出ている

 2D画質については互角かやや優位。LX900のオプティコントラストパネルならではの艶やかな映像やコントラスト感の高さに対し、本機はコントラスト感についても十分に肩を並べており、くっきりとした映像を再現する。ちなみに2Dでも倍速表示ながら、LEDバックライトのスキャニングを組み合わせて4倍速相当の動画応答性を実現した「モーションフローXR 240」を搭載。なめらかの動きの再現を実現している。

 より良くなったと思うのは、階調のスムーズさやノイズ感の少なさによって、鮮明で見やすい映像となっていること。これはまさにX-Realityの実力が出ている部分だろう。

 このほか、昨年登場したLEDバックライト自体も熟成が進んでいるようで、LX900など上級機クラスではあまり気にならなかったが、(EX720と)同クラスのEX700などでは色合いが全体に青みが強くなる傾向があった。本機では鮮やかな原色から肌色などの中間色までかなり自然な色合いが再現できるようになっている。

 ディテール再現については、明らかに向上した。細部の再現を高めているにも関わらずノイズをきちんと抑えているし、ディテールの強調感や輪郭の不自然さといったエンハンス効果の弊害も目立たない。すっきりと見やすく精細な映像は、かなりの実力だ。輪郭の再現もギザギザとした乱れもなく、クリアに再現される。

 写真のようなぼけ感を生かした映像では、ピントの合った手前の花との対比がはっきりと出て立体感のある映像になる。都市のビル群を映したようなディテールの詰まった映像でも、ノイズのチラツキが少なくスムーズで、しかもビルの直線的な輪郭がスムーズかつ鮮明。

 トータルで言うと、映像の品位がかなり高まっており、より緻密になったと感じた。この高画質回路の実力はかなりのものだと思う。それだけに、さらに映像処理チップを追加し、パネルにもこだわったHX920シリーズなどの上位モデルの画質の実力もかなりのものになると期待できる。

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