特にこだわりが見えるのが、バッテリーに対する考え方だ。2011年1月に発表された従来型のSシリーズと比較するなら、軽くなって高性能になって、大幅にバッテリー駆動時間が延びている。Sandy Bridge世代CPUの優秀さもあるだろうが、それ以上に省電力化に対するこだわりがある。それがよく見えるのは、「ハイブリッドグラフィックス」機能に関する点だ。
すでに述べたように、SBシリーズにはCPU内蔵のインテル製GPU(以下IGPU)と、AMD製の独立GPU(以下DGPU)の2つが搭載されている。それを切り替えつつ利用することで、高パフォーマンスとスタミナの両立を狙っている。この種の機能はZシリーズのアイデンティティといえるものだったが、SBシリーズにも同様に搭載された。
宮入「これは独立GPUにNVIDIAを使う場合でも同じなのですが、Sandy Bridge系CPUでハイブリッドグラフィックスを実装する場合、必ずIGPUが利用するフレームバッファ(ビデオメモリー)を出力に使わなくてはいけません。 DGPUは、あくまで『GPU』としてのみ性能を発揮する、ということになっています」
「それでも今回スイッチを設けているのには、理由があります。AMDやNVIDIAではオートマチックに、アプリケーションごとにGPUを切り替える仕組みになっているのですが、オートマチックゆえに、例えばバスの電源は常時通電させていて、GPUをいつでも起きたり止めたりできるようにと、スタンバイの電力がかかっているんです」
「SBシリーズはモバイルPCですので、そのスタンバイ電力はもったいないと考えました。高性能で使いたい時には、『お客様が(スイッチで)意志を示してください』ということにしたのです。スイッチを『STAMINA』にした時には、DGPUの方は完全に電源が切れる、という形にしています」
「ですから、お客様から見た時の使用感というのは、従来のZシリーズのものに非常に近くなったはずです。Zでは『Auto』を入れた3モードでしたが、SBでは2モードとしました」
石山「正確な数字ではありませんが、オートで切り替える場合、DGPU側のバスのスタンバイ電力の消費だけで40分程度になるのです。それに加えてIGPU側のPCI-Expressの待機電力を加えると1時間を超えるのではないか、と。オート切り替えは楽ですが、お客様はスタミナを重視して使いたいわけです。それがバスなどのスタンバイ電力のために、40分から1時間も利用時間が短くなっては本末転倒だと思います」
宮入「今回は、AMDが提供する『PowerExpress 4.0』という、スイッチャブルグラフィックソリューションを使っています」
「従来のZシリーズは、ソニーとNVIDIAが共同開発した『Muxed』(Multiplexer)と呼ばれる、完全にGPUを切り替える技術を使っていました。これは非常にデバイスドライバーが煩雑で技術的なレベルも高く、ドライバーの品位を保つのが非常に難しかった。今回はそこをAMDのソリューションに変えたわけです」
「われわれがカスタマイズしていますので、AMDが提供する最新のドライバーがSBでそのまま使えるか、というと問題があるのですが……。とはいえ、従来のような煩雑な作業はなくなりましたので、最新のドライバーをよりタイムリーに提供できるようになったはずです」
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