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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第22回

端末でもインフラでも勢い増すHuawei、米国では政治家が懸念

2011年03月09日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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 世界経済を反映して、モバイル業界でも中国の存在感が増している。モバイルの中国企業としては、端末から通信インフラまでを手がけるZTEやHuawei Technologies(ファーウェイ)などがある。この両社は端末サイドでもOEM/ODMメーカーとして事業を拡大してきた。

 今後はブランド強化戦略により、存在感がさらに増すことになりそうだ。一方、インフラでは無線分野でナンバー3にのし上がったHuaweiと欧米政府との間で緊張が高まっている。通信が国家の重要なインフラとなる中、Huaweiの勢いが無視できなくなったことを示唆している。今回は主にインフラ側でのHuaweiについて見ていきたい。

日本でもモバイルルーターやスマートフォンで
売上を伸ばしているHuawei

ファーウェイ製の「Pocket WiFi」シリーズは、イー・モバイルを支える主力製品だ

 端末メーカーとしてのHuaweiはZTEと同様、これまでの比較的安価なエントリ向けの機種を製造してきたが、スマートフォンブームを契機にグローバルとブランド戦略を強化する。すでに日本を含めた世界で展開しており、2010年は前年比30%以上の増加となる1億2000万台を出荷した。このうちスマートフォンは500万台を受注し300万台を出荷したと報告している。売上高は45億ドル。2011年度は60億ドルを見込むという。フォーカス分野となるスマートフォンではAndroidを採用し、ブランドの確立を図る。Androidを活用してトップブランドにのし上がりつつある台湾のHTCをモデルにしているように見える。

 2月のMWCでHuaweiは、スマートフォン、タブレット、モバイル無線ルーターなどの新作を披露した。たとえばスマートフォンでは、Android 2.3を搭載した厚さ11.2mmの「IDEOS X3」を発表、3.2型では最も薄いという外観に加え、TwitterやFacebookを統合するソーシャル機能、iTunesとの同期などの特徴を持つ(日本ではソフトバンクが4月中旬以降に発売予定としている「004HW」のグローバルモデルにあたる)。

MWCで製品発表会を行なったHuawei。インフラ事業やOEM元として、業界の黒子的な役割を担ってきた同社だが、みずからブランド力を強化しての製品リリースも進めている

アメリカ企業の買収で
当局からストップをかけられた

 このように端末分野は順調だが、同社の中核事業である通信インフラ機器ではアメリカで難航している。Huaweiは2月25日、公開書簡を発表し、公正な取り扱いを求めてアメリカ政府に調査を依頼した。

 直接の背景となったのは、同社が断念した米3Leaf社の資産買収案件だ。Huaweiは2010年5月にサーバーベンダーである3Leafの資産を200万ドルで買収したが、2011年2月、対米外国投資委員会(CFIUS)の勧告を受けて、この買収申請を撤回することを発表した。

 CFIUSはHuaweiの創業者兼CEOであるRen Zhengfei氏が人民解放軍に所属していた経歴を根拠に中国政府と関係があると推測し、3Leafの資産買収撤回を求める勧告を通告していた。これに対しHuaweiは、一度は勧告を拒否するとしていたが結局は受け入れることにした。

 公開書簡でHuaweiは、「中国軍部との密接な関係などの主張は根拠がない」と反論している。そして買収を断念した理由について、勧告を拒否することによる影響を考慮して、最終的に受け入れることにしたと説明している。そしてアメリカ政府が自社に対して懸念を抱いているのであれば、正式な調査を実施して、「明白かつ正確な結論を出すことを望む」としている。

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