四本淑三の「ミュージック・ギークス！」 第50回

ニコ動に住むギターの神様、その名は[TEST]

ギター野郎必読 [TEST]さんのピッキング練習法

――　次は歴史を遡りましょう。ギターを最初に持ったのはいつ頃ですか？

[TEST]　小学5年か6年ですね。親父がバンドをやっていた関係で、家にエレキギターもアコーステイックギターも両方あったんですね。それでコードくらいは教えてもらっていたんです。でも中学の3年間は部活をやっていたんで、ギターは全然触らなくなっちゃいました。でも高校に入って面白そうな部活がなかったので。そこから本格的に練習を始めたんですね。

小学生時代からギター漬けだったそうだ

――　部活は何を？

[TEST]　陸上ですね。トラックもフィールドもやっていました。

――　僕が子供の頃は、ギターを弾く前にまず腕立て伏せから、なんてことが真面目に言われてましたけど、何か役に立ってますか？

[TEST]　わかります。親父にもやれって言われました。指立て伏せで指の筋肉を鍛えてからやれって。ミュージシャンは体力勝負みたいなところがありますから。まずライブだったら移動して、その前にリハもあって、休憩を入れて本番ですから、1日の最後まで疲れない体力は必要ですね。

――　最初に買ったギターは？

[TEST]　自分で買ったのはレスポールのコピーモデルでした。たしかエピフォンでしたね。当時はB'zの松本さんが好きだったので、ゴールドトップでした。ミーハーだったので形から入ったんです。

――　やっぱりB'zをコピーしたんですか？

[TEST]　しました。今でこそ無茶なことするなぁ、とは思うんですが。当時流行っていたパンクやメロコアのほうが、よほど楽なのに。あとはギターヒーローというものにあこがれを持つようになって、Mr.Bigとかイングウェイとか、あの辺のコピーばっかりやっていました。

――　じゃあスウィープピッキング（ダウン・アップピッキングのみでアルペジオを高速に弾く奏法）を延々と？

[TEST]　やってましたね。スウィープはできなかったんです。高校を卒業する頃までずっと練習やってましたね。

――　[TEST]さんでも大変でしたか。僕は[TEST]さんの動画を見て真似しようとして、すぐ絶望しましたけど。

^{▲ 3分55秒あたりから、右手のトリルも含めた超絶スウィープ奏法が登場する。やってみよう！}

[TEST]　練習は結構大変です。多分自分で考えた練習法が良かったと思うんですけど。

――　おおっ。その方法を教えてください！

[TEST]　これは全部に共通することなんですが、まず自分が上手く弾けたときは、どういう音が鳴るのかを自分で分かっておくべきなんですね。言い換えると、自分の憧れているギタリストの音、そのままになれば完成だとするなら、そこに余計なノイズが入ったり、あるいは音が出てなかったり、そういう点をシビアにチェックして完成形を頭に叩き込むんです。それと同じ音が実際に鳴るまでひたすら練習するんです。

――　イメトレと実技、みたいなことですね？

[TEST]　そうです。ギターの弾けない人の何が問題かといえば、弾くことに一生懸命になりすぎて、出ている音を気にしていないし、その先にある完成形を分かっていない。完成した音が分かっていると、それに気を配るようになるんですね。それがないと上手く弾けた時も分からないし、上手く弾けてない時も分からないんです。

――　譜面通りに指が動いたら終わりじゃないと。それは最終的に、人がどう演奏を聴くのかという話でもありますね。

[TEST]　はい。それは感情的なことと直結していて、自分でどう演りたいかが頭の中にあって、その完成形がイメージできるから音にできると思うんです。ギターの本には「エモーショナルなこととメカニカルなことは別物だ」と書かれていたりしますけど、それは表裏一体で、「メカニカルに演奏するのが自分の感情の完成形」であれば、それは感情的に弾けているということになると思いますから。

つい手もとを撮影してしまった。この美しい指先！

――　動画を観てビックリしたのはリズムの正確さですね。どんな練習をしているんですか？

[TEST]　リズムのトレーニングは癖を作ることなんですね。自然にその癖が出るようにする。テレビを見ながらメトロノームを鳴らして裏打ちから崩さないとか、自然に何も気にしていなくても、気が付いたら合っているという状態にするんです。

――　無意識まで刻みこむんだ。

[TEST]　そうです。無意識のレベルでできないと。

（次のページに続く）