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スピーチプライバシーシステムのユニークなアプローチ

会話からの情報漏えいを遮断するヤマハ「VSP-1」とは?

2011年03月04日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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3月3日、ヤマハは「聞かれたくない会話を独自の情報マスキング音でカモフラージュし、会話のプライバシー(スピーチプライバシー)を守る」システム「VSP-1」を発表した。

音圧ではなく、音質でマスキング

 ITの分野で「情報漏えい対策」や「セキュリティ保護」といった場合には、通常はサーバやストレージから情報を盗み出される被害をイメージするが、一方でユーザーを騙したり誤解させたりして自ら情報を提供させるように仕向ける「ソーシャルエンジニアリング」といった手法もあり、生身の人間のリアルな活動にも目を向ける必要がある。

 気の利いた企業では、エレベータの内部に「会話は一休み」といった標語が張り出してあったりするが、これは「お静かに」という意味合いよりはむしろ、乗り合わせた第三者に会話を聞かれることが時によっては重大問題につながるリスクがあるからだ。個人的にも、コーヒーショップなどで近隣の席での会話の中にIT企業の名前が出てきたりするとつい気になってしまうということがしょっちゅうあるし、場合によっては「そんな話をそんな堂々としちゃって大丈夫?」と心配になってしまうようなこともないではない。

 こうした、個々人の不注意な振る舞いによる意図せぬ情報漏えい/不適切発言をテクノロジーで網羅的に防止することはできないが、特定の状況においては有効な技術というものも考えられる。今回ヤマハが発表した「スピーチプライバシーシステム VSP-1」もそうした例の1つだといえるだろう。

概要説明および事業計画等について説明したヤマハ 上席執行役員 近藤 昌夫氏

 多くの人が日常的に経験する場面として同社では、病院や薬局といった医療機関での会話を例に挙げていた。調剤薬局などでは、カウンター越しに薬剤師と話すようになっていて、自分の後ろには他の人が順番を待っている、という状況がよくある。こうした場合に薬剤師が薬の説明をすると、「自分がどのような病気の薬の処方を受けたのか」が周囲の人に筒抜けになってしまうことがある。単なる風邪薬程度のことなら誰も気にしないだろうが、世の中には「他人には知られなくない病気/症状」というものもあり、単に恥ずかしい思いをするというレベルから深刻なプライバシー侵害になり得るケースまで考えられる。

スピーチプライバシーを守る環境

 とはいえ、調剤薬局に完全防音の個室を用意する、といった設備面での対応は非現実的なことが多いだろう。こうした場合に使われる解決策として「マスキング音」というものがある。要は、スピーカーから何らかの音を流しておき、周囲から会話が聞き取りにくくするというものだ。BGMからノイズ的な音まで、いくつかの手法があるのだが、今回ヤマハが開発したのは、人の話し声とよく似た音色の音を流すことで会話の音声を判別しにくくする、というものだ。

マスキング音で周囲から声を聞こえにくくする

 ノイズを流すような技術は、いわば「うるさくて聞こえない」という状況を作るもので、「エネルギーマスキング」と呼ばれる手法だ。これに対して同社は「情報マスキング」技術を開発したとしている。

「ガヤガヤ」状態を意図的に作り出す

会場に展示された「スピーチプライバシーシステム VSP-1」

 VSP-1は、外観としては小型のスピーカーボックスといった形状をしており、大きさは10cm角の立方体を2つ積み上げたくらい。接続するのは電源コードのみで、特別な設置工事などは不要だ。

 大勢の人が集まるパーティ会場などでは、さまざまな話し声が混ざり合って個々の声の判別がつきにくくなり、全体として「ガヤガヤ」としか表現のしようがないようなぼやけたノイズとして聞こえてくる、という状況は誰もが経験したことがあるだろう。同社がいう情報マスキングは、これと同じ状況を意図的に作り出すものだ。人の音声から合成した「撹乱音」をスピーカーから流すことで、この撹乱音と重なり合った会話が聞き取りにくくなる、というのが基本的な原理となる。

他の方式との効率の差。単語了解度とは、会話が聞き取れる度合いを単語数で判定したもので、単語了解度0.1とは、会話の中の10単語中1単語しか聞き取れなかった、つまり事実上会話の内容は全く理解できないという状況を意味する。この単語了解度0.1を実現する際の音量は、従来のノイズ方式に比べると9dB低くて済むというのがヤマハ方式のメリット。一方、BGM方式は会話をマスキングするという目的にはあまり役立たないことも分かる

(次ページ、「ガヤガヤ」状態を意図的に作り出す)


 

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