遅れると負けの最新の動向を追いかけ続けるとともに
ソニーという差別化要素を活用する
――多くのベンダーがAndroidスマートフォンを開発していますが、Sony Ericssonはどうやって差別化していくのでしょう?
戦略の骨子としては、Android、ソニー、Sony Ericssonの3つがあります。
Androidとハードウェアは急ピッチで進化しており、われわれは最新のOSと最新のチップセットを使って最先端を走れる体制を作っています。ここは差別化にはならない部分で、一歩でも遅れると酷い目に逢うという領域です。
差別化のポイントとなるのはソニーです。Xperia arcではモバイルBRAVIAエンジンを搭載し、そこにソフトウェアも合わせて綺麗な動画を楽しむソリューションを提供します。これはソフトもハードもそろわないとできません。ソニーの画面技術とソニーのソフトウェア技術を使って、いかに綺麗な映像を楽しんでもらうか。
これはソニーグループだからこそできることで、他社にはできません。同じ技術が実現したとしても、裏につながるブランド力は一朝一夕ではできないものです。“BRAVIA”というブランドが世界的に認知されているという背景があってなしえる戦略で、ここは明確な差別化となります。
一方、Sony Ericssonですが、外観ではデザインへのこだわりを大切にしています。どのメーカーも(端末が)薄くなり、画面が大きくなり、デザイン的にまとまってきています。そんな中にあっても、Xperia arcでは「パッと見て美しい端末を開発できた」と自負しています。
端末の内側ではGoogleが提供するものがそのまま載っているものもありますが、われわれはどうすればユーザーに楽しく使ってもらえるか、ユーザーインターフェースを工夫しました。
外観と内側の合わせ技により、明確な差別化を図れていると思います。
――Androidはバージョンアップが速いが、そのあたりの苦労は?
大変です(笑)。でも自社でOSを進化させることと比べれば、大変ではありません。コストが安くなったというより、コストを割くところが変わりました。より魅力のある商品開発が可能になりました。
直感的な操作を重視してUIを設計
――ユーザーインターフェースはどうでしょう? どこも力を入れていますが。
難しいことは考えていません。起動したり、アプリを探したり、聞く、見るなどの操作を直感的にできることにフォーカスしていきます。
たとえば、「Xperia X10」で搭載した「Mediascape」では、1つのアプリの中にさまざまなメディアコンテンツを集めました。探しやすくすることが目的でしたが、結果としてコンテンツが増えてくると起動が重くなってしまいました。
そこで、Xperia arcからはMediascapeを発展させ、「Mediapane」としてアプリではなくウィジェットを利用しました。入口は1つで、中に入ると音楽プレーヤー、ギャラリーなど別々のアプリです。これにより起動の問題を解消しました。
ユーザーの使い方の広がりに応じた
製品の拡大も差別化のポイントになる
――製品ポートフォリオ戦略を教えてください。
フラッグシップはXperia arcとなり、その下に今回発表した「Xperia neo」「Xperia pro」が入ります。
われわれのポートフォリオは、コミュニケーションエンターテインメントをどうやって具現するのかを土台としており、スペックに応じたタテの軸、広がりとなるヨコの軸があります。Xperia PLAYは遊びの方向に拡大したもので、入力のしやすさや実用性という方向に拡大したのがXperia proとなります。ヨコの軸の種類にはいろいろあると思っており、バリエーションを増やしていきます。このようなポートフォリオの組み方もわれわれの差別化要因だと思っています。
――「Windows Phone」は採用しないのですか?
これまで、「Xperia X1」「Xperia X2」「Aspen」でWindows Mobileを採用してきましたが、止めたわけではありません。社内では常にWindows Phone 7の完成度やタイミングを見ています。
――Xperia PLAYは新しいコンセプトという位置づけですが、今後新しいコンセプトとしてどのような分野を考えているのでしょうか?
携帯電話業界に以前からある構想がウェアラブルです。時計なのかクリップなのかはわかりませんが、そこでエンターテイメントをどうやって出していくか、これは常に考えていることです。
またソニーの機器間連携を可能にしていくという方向もあります。Xperia arcでは今回、HDMI端子により携帯電話のコンテンツを大画面で楽しめるようになりました。Androidのアプリを作ればリモコン化は簡単です。Blu-rayのディスクをコントロールするなども考えられます。将来的にはHDMIのケーブルもなくなるでしょう。
このように、ソニーグループの一員として、スマートフォンが自宅で家電のコントローラーとなる世界を築いていきたいと思っています。音楽/ビデオ配信の「Qriocity」を利用できるようにする写真共有の「Personal Space」など、(ソニーの)サービスとの連携も考えていきたいと思っています。
Xperiaが大きくなったものを
“タブレット”と呼ぶつもりはない
――今年のMWCでは各社がタブレットを出しています。Sony Ericssonがタブレットを出す計画はあるのでしょうか?
もちろん、市場を注意深く見ています。ですが、われわれとしては、タブレットというよりも、現在の画面が大きくなると何ができるのか、という方向で考えています。また、通信速度は今年から来年にかけて大きく変わりますが、そうなったときにユーザーのニーズがどのように変わるのか。つまり、サイズや機能ありきではなく、ユーザーへのメリット/ベネフィットは何かを考えています。
われわれはソニーグループの中でスマートフォン分野を担っています。スマートフォンからのアプローチとして、画面サイズをどのぐらいにすれば付加価値を与えられるのかを検討しています。現在、戦略のひとつとして検討が進んでいますが、“タブレット”と呼ぶつもりはありません。
――日本市場について教えてください。
まずは、Xperia arcの提供にフォーカスしています。Xperia arcはこれまでのスマートフォンで得たフィードバックを作り込みました。たとえば音声通話。スマートフォン時代になって忘れがちな部分ですが、非常にクリアな音声サウンドを実現しています。
このように、機能や使い勝手など基本的なことについて細部までこだわったのがarc、そしてneoです。手に取っていただければ、すぐにわかると自信を持っています。
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